尿中のビスフェノールAやフタル酸エステル類と妊娠する力の関係(LIFE研究)

妊孕性に影響する因子

2014年04月04日

Fertility and Sterility

妊娠を望むカップルの男性パートナーの尿中にフタル酸エステル濃度が高いほど妊娠するまでに時間がかかることがアメリカで実施された環境中の化学物質や生活習慣と妊娠する力の関係を調査したLIFE研究の結果から明らかになりました。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の国立子どもの健康とヒト発達研究所(NICHD)の研究者らは、2005年から2009年にかけて実施されたLIFE(the Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment)研究に参加した不妊症でない妊娠を望むカップル501組を対象に、カップルの尿中のビスフェノールAやフタル酸エステル類などの化学物質の濃度を妊娠するまでにかかった期間を解析することで、化学物質とカップルの妊娠する力の関係を調べました。

その結果、男性パートナーの尿中にフタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸モノベンジルが確認されたカップルはそうでないカップルに比べて20%妊娠するまでに長くかかっていることが分かりました。

その一方、カップルの尿中のビスフェノールAや女性の尿中のフタル酸エステル類は妊娠するまでにかかった期間に関連しませんでした。

コメント

ビスフェノールとは食品の容器などに使用されている化学物質のことで、以前から環境ホルモンとしてさまざまな健康への悪影響を指摘されている有害物質です。ポリカーボネート、エポキシ樹脂と呼ばれるプラスチックの原料として使用されていますが、食器や食品の容器などにも使用されていることから食事を通して微量が体内に取り込まれているとされます。

また、フタル酸エステル類もポピュラーな化学物質で、プラスティックや合成ゴムなどを柔らかくして成形加工しやすくすることを目的に使われています。

いずれも環境中に存在して体内に入るとホルモンと似た作用をして、ホルモンの分泌系を撹乱し、生殖機能などに悪影響を与えるのではないかと懸念されている「環境ホルモン」とされています。

今回の報告はアメリカで環境中の化学物質と妊娠する力の関係を調べた「LIFE研究」で得られたデータを解析しています。LIFE研究では、これまでもPCBや鉛、カドミウムが生殖機能に悪影響を及ぼすことを報告しています。

また、ビスフェノールAが生殖能力を低下させるおそれがあるとの研究報告もいくつもなされています。

ところが、今回の研究でわかったのは3種類のフタル酸、フタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸モノベンジルが尿中に確認された男性のカップルは、妊娠するまでの期間が20%も長くかかるということです。

もちろん、あくまで、関連があったということで、この結果だけで、フタル酸類が男性の生殖能力を低下させることが確かめられたわけではありません。

ところが、信頼のおける研究であることから、何らかの影響を及ぼしている可能性が高いわけですから、女性だけでなく、男性も食生活や運動で排泄機能を低下させないようにするなどして、化学物質については注意しておくことに越したことはないということになるでしょうか。