エジプトのマンソウラ大学の研究者らはクロミフェンが無効のクロミフェン抵抗性PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の患者101名をランダムにクロミフェンとコエンザイムQ10を併用するグループ(51名)とクロミフェンのみのグループ(50名)に分けて、それぞれ、82周期と71周期の治療成績を比較しました。
クロミフェン+コエンザイムQ10併用療法は、クロミフェン150mgを月経2日目から5日間とコエンザイムQ10を月経2日目からhcg注射の日まで1日180mg(60mgを3回)併用、対照群(クロミフェン単独)はクロミフェン150mgを月経2日目から5日間服用しました。
その結果、14mm以上、18mm以上の発育卵胞数はコエンザイムQ10併用グループのほうが有意に多く、hcg注射の日の子宮内膜の厚さも併用グループのほうが厚く(8.82対7.03)、CoQ10併用グループでは82周期中54周期(65.9%)に排卵が起こったのに対して、クロミフェン単独グループでは71周期中11周期(15.5%)しか排卵が起こりませんでした。また、血中のエストラジオールやプロゲステロン濃度は併用グループのほうが有意に高く、CoQ10併用療法のグループでは51名中19名が妊娠(37.3%)したのに対して、クロミフェン単独グループでは50名中3名(6%)しか妊娠に至りませんでした。
どちらのグループにおいても肥満の女性とそうでない女性の間で治療成績の差は見られませんでした。
このことから、クロミフェンが無効のPCOS患者ではコエンザイムQ10を併用することでより有効で、安全性の高い選択肢になり得ることが分かりました。
コメント
無排卵、もしくは、排卵障害のあるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性には、飲み薬の排卵誘発剤であるクロミフェンで排卵が起こることを期待しますが、クロミフェンの効果が思わしくないクロミフェン抵抗性のPCOSには、より強い排卵誘発作用のある注射による排卵誘発剤やインスリン抵抗性改善薬が使われるのが一般的です。ただし、特に、hmg-hcg療法では、副作用のリスクが伴うことから、慎重に卵巣を刺激する必要があります。
一方、最近、PCOS患者ではミトコンドリアの機能の低下による卵子の質の低下が指摘されています。
そこで、ミトコンドリアでエネルギー産生に関与し、強い抗酸化作用のあるコエンザイムQ10をサプリメントで補充する効果を確かめるべく今回の試験が実施されました。
これまではコエンザイムQ10についてはカナダのトロント大学や東大の研究チームが老齢のマウスを使った試験で生殖機能向上作用を確かめています。
今回のコエンザイムQ10の併用による発育卵胞の増加や排卵率、妊娠率の改善は卵巣機能の向上によるものではないかとしています。
いずれにしても、安全性の高いビタミン様物質ですので、卵巣機能の低下が原因で妊娠するまでに時間がかかっている場合はコエンザイムQ10をサプリメントで補充する価値があるかもしれません。