尿中のリグナン(植物性エストロゲン)濃度が高い女性ほど早く妊娠する

妊孕性に影響する因子

2014年04月15日

The Journal of Nutriton

尿中の植物性エストロゲン、リグナン濃度の高い女性ほど、妊娠するまでにかかる期間が短いことが、アメリカで実施された生活習慣と妊娠する力の関係を調査したLIFE研究の結果から明らかになりました。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の国立子どもの健康とヒト発達研究所(NICHD)の研究者らは、2005年から2009年にかけて実施されたLIFE(the Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment)研究に参加した不妊症でない妊娠を望むカップル501組を対象に、尿中の植物性エストロゲン(イソフラボン、リグナン)濃度と妊娠するまでにかかった期間を解析することで、植物性エストロゲンと妊娠する力の関係を調べました。

501組のカップルを1年間、もしくは、妊娠する迄フォローした結果、347組が妊娠、妊娠した女性は妊娠しなかった女性に比べて、尿中のリグナン濃度が高かったことがわかりました。

一方、尿中のイソフラボン濃度は関係しませんでした。

また、統計学的に妊孕性に影響を及ぼす因子を排除した場合でも、排除しなかった場合でも、尿中のリグナン濃度が高い女性ほど、妊娠するまでの期間が短かったことがわかりました。

コメント

ライフスタイルと妊娠する力の関係を調査したアメリカのLIFE研究では、子どもを望むカップルの妊娠する力を「避妊をやめてから妊娠するまでにかかった期間」を目安にし、化学物質やストレスなどが及ぼす影響を調べています。

今回は植物性エストロゲンです。

植物性エストロゲンとはその名の通り、植物中に含まれる女性ホルモン(エストロゲン)のような物質のこと。「エストロゲンのような」というのは、エストロゲンに似た働きをするという意味です。「似た働きをする」というのは、化学構造がエストロゲンに似ているためエストロゲン受容体に結合し、それぞれの細胞や臓器に命令する(働きかける)ようになるというものです。ただし、本物のエストロゲンに比べると、その作用はごくごく弱いものとされています。

今回の試験では植物性エストロゲンの中でも、最もよく知られている大豆に豊富な「イソフラボン」と亜麻の種(フラックスシード)に豊富な「リグナン」のカップルの尿中の濃度を測定し、妊娠するまでにかかった期間との関連を解析しています。

植物性エストロゲンと妊娠の関係をこのような方法で調べたはじめての研究とのことですが、結果は男女とも尿中のイソフラボン濃度は妊娠するまでの期間に関係しませんでしたが、女性の尿中のリグナン濃度が高いほど妊娠するまでの期間が短かったというものです。

さて、この結果から言えることは、リグナンのサプリメントを摂ればよいというような単純なものではないと思います。

リグナンは、特にフラックスシードやゴマに豊富ですが、それだけに含まれているわけではなく、全粒穀物など、加工精製されていない穀物や野菜、果物に含まれています。そのため、尿中のリグナンの濃度が高いということは、精製度の低い穀物や野菜、果物を、バランスよく食べていると理解すべきで、リグナン濃度が高い女性ほど、妊娠するまでの期間が短かったということは、単にリグナンだけの影響ではなく、自然に近い食材をバランスよく(加工食品が少ない)食べたからだと解釈すべきだと考えられるからです。

また、植物性エストロゲンは上記のように、エストロゲン様作用があるのですが、受容体に結合することから、更年期など体内のエストロゲン分泌量が少なくなっている場合にはそれを補う働きが期待できますが、月経のある時期には本物のエストロゲンの代わりに植物性エストロゲンが結合してしまうと、本来のエストロゲン作用を弱めてしまうことになりかねません。

イソフラボンをはじめとする植物性エストロゲンのサプリメントを摂ることで、かえって、月経サイクルが乱れてしまうのはこのようなメカニズムのよるものではないかと考えられています。

そのため、イソフラボンなど植物性エストロゲンのサプリメントは時として、妊娠にマイナスの影響を及ぼしてしまいかねませんので、主治医の先生に摂取したほうがよいと言われない限り、避けるのが無難です。

もちろん、大豆食品を食べることはよいことです。

もう一つ、今回の試験ではイソフラボンは、ゲニステイン、ダイゼイン、O-DMA、エコール、そして、総イソフラボン、また、リグナンはエンテロジオール、エンテロラクトン、そして、総リグナン濃度を、それぞれ、測定しています。それらは、全て、イソフラボンやリグナンを食べた後、腸内細菌によって変換され、つくられるものです。

つまり、腸内細菌の状態いかんでは、変換する力が低下することもあり得ます。そのため、腸内環境を整えることも妊娠のためには大切な条件になるのかもしれません。