精液所見が正常な男性の精子DNA損傷は年齢と運動率に関連する

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2014年04月24日

Fertility and Sterility

不妊クリニックに通院するカップルの精液所見が正常な男性の11%が精子DNAの損傷率が高い値とされる30%以上だったこと、また、精子DNA損傷率は、年齢が高くなるほど、運動率が低いほど、高くなることがフランスで実施された試験で明らかになりました。

2013年の1月から10月にパリの不妊治療クリニックに通院し、検査を受けた無精子症や重度乏精子症を除いた4,345名の男性を対象に、精液所見と精子DNAの損傷率の関係を調べました。

その結果、平均の精子DNA損傷率は全体では20.7%±12.4%、精液所見が正常だった男性(1,974名)では17.6%±10.1%、そして、精子DNAの損傷率が高値とされる30%以上だった男性の割合は、全体では20%、精液所見正常男性では11%でした。

また、精液所見が正常だった男性では、年齢が高くなるほど精子DNA損傷率が低くなり、精子DNA損傷率が高くなるほど運動率が低い傾向が見られました。

コメント

精子DNAの損傷とは、極々簡単に言ってしまうと精子の頭部に格納されているDNAの二重らせんのらせんがちぎれてしまうことで、その割合が30%を超えると高値とされ、自然妊娠が難しくなると言われています。

また、精子のDNA損傷率が高くなるほど、自然妊娠や人工授精、体外受精の妊娠率が低くなるとの報告があります。

精子DNA損傷率が高くなるのは、精子のアポトーシス(自然死)が途中で止まったケース、精子の成熟が不完全なケースも考えられていますが、その主な原因は活性酸素過剰による酸化ストレスとされています。

活性酸素は精子のDNAを傷づけるだけでなく、精子細胞内のタンパク質や細胞膜の脂質を酸化して、細胞の機能を低下させてしまいますから、精子DNAの損傷率が高いと、精子運動率が低いことが多くなります。

また、これまで精子DNA損傷率は年齢とともに高くなることが確かめられていますが、おそらく、年齢とともに、活性酸素が増加したり、それを無毒化する力(抗酸化力)が低下したりするからで、酸化ストレスによる細胞の機能低下は、広い意味で老化現象の主因と考えられています。

従来、精子DNA損傷率が高い男性では精液所見の精子数や精子運動率、正常精子形態率も悪くなると考えられてきましたが、今回の研究報告では精液所見に問題がなくても、11%の男性が精子DNA損傷率が30%を超えていたことがわかりました。

そのため、男性の年齢が高くなると、たとえ、精液所見が問題がなくても、精子DNA損傷率が高いため、パートナーの妊娠率が悪くなっているケースがあり得るということになります。

高齢のカップルは食生活やサプリメントで酸化ストレス対策を講じることも大切なのかもしれません。男性の場合は食生活だけでなく、下半身をあたため過ぎないように注意したり、出来るだけ頻繁に(週3回以上)射精しておくことが有効と考えられています。