砂糖入り清涼飲料水と精子の質の関係

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2014年05月24日

Human Reproduction

砂糖入り清涼飲料水をたくさん飲む男性ほど精子運動率が低いことがハーバード公衆衛生大学院の研究チームの調査によって明らかになりました。

研究チームは、2009年から2010年にかけて実施された18から22才の健康な男性のライフスタイルと精液検査の結果との関係を調べた「ロチェスターヤングメンズスタディー」の参加者を対象に、食物摂取頻度調査から得られた砂糖入り清涼飲料水(ソフトドリンク)の摂取状況と精液所見(精子濃度、運動率、形態率、精液量)や生殖ホルモン値との関係を調べました。

その結果、砂糖入り清涼飲料水をたくさん飲む男性ほど精子運動率が低いことがわかりました。

砂糖入り清涼飲料水の摂取量別に4つのグループに分けたところ、最もたくさん飲んでいるグループ(1.3-7.5seiving/day)の精子運動率は最も少ないグループ(0_0.2seiving/day)に比べて、9.8%低かったとのことです。そして、このことは、肥満ではない男性の間で顕著に見られたとのことです。

また、砂糖入り清涼飲料水の摂取量は、精子濃度や正常精子形態率、精液量との関連は見られませんでした。

コメント

ハーバード公衆衛生大学院のチャヴァロ先生のグループはこれまで「ロチェスターヤングメンズスタディー」で得られたデータから、食生活のパターンや日常の運動習慣、乳製品の摂取、抗酸化物質の摂取と精子の質との関連について、4つの論文を発表してきましたが、今回は砂糖入り清涼飲料水の摂取と精子の質の関連を調べています。

砂糖入りの清涼飲料水(ソフトドリンク)については、アメリカでは、トランス脂肪酸と並ぶ「身体に悪い」食品として大きな問題になっています。それは、砂糖入り清涼飲料水をたくさん飲む人はインスリン抵抗性を招き、太りやすく、高インスリン血症を招き、糖尿病をはじめとする生活習慣病にかかりやすいという多くの研究報告がなされているからです。

砂糖入りの清涼飲料水が問題とされているのは、砂糖もさることながら、砂糖よりも甘みが強く、安価に製造できるため、多くのソフトドリンクで使われている天然甘味料のブドウ糖果糖液糖(果糖ブドウ糖液糖)や人工甘味料のためです。

ブドウ糖果糖液糖というのは、主にトウモロコシなどのデンプンを加工してつくられた天然の甘味料で、「異性化糖」と呼ばれ、その名の通り、ブドウ糖と果糖の液体で、血糖値が上がりやすくなります。

その砂糖入り清涼飲料水をよく飲む男性は精子運動率が低いとのこと。よく飲むというのは、1日に1.3〜7.5serving、中央値が2.72servingです。servingというのは、おそらく、250〜350mlなので、毎日、最低でも1本は飲むという感じでしょうか。

研究チームは砂糖入り甘味飲料をよく飲むことで、インスリン抵抗性を招き、高インスリン状態や酸化ストレスの増大が精子の運動率の低下に繋がっているのではないかと推測しています。

ただし、この傾向は肥満でない男性のみに見られたと言います。このことは、砂糖入りの清涼飲料水をよく飲む男性は、肥満を介して、精子の質を低下させるのではないかとの研究チームの仮説に反する結果でした。これは、おそらくは、肥満による精子への悪影響は砂糖入り清涼飲料水の影響を上回っているので、砂糖入り清涼飲料水の摂取量でみると、肥満でない男性にしか関連性がみられなかったのではないかとしています。

要は、ソフトドリンクをたくさん飲むことによる精子への悪影響は、肥満のそれに比べれば小さいものだとも言えます。実際に最もたくさん飲んでいる男性は最も少ない男性に比べて運動率が9.8%低いというものでした。

また、実際に妊娠させる力にどの程度の影響を及ぼすのかも今回の研究だけでは不明です。

いずれにしても、男性不妊も、女性不妊も、生活習慣病予備軍的な側面があるわけですから、砂糖入り清涼飲料水は控えるに超したことはありません。飲み物はミネラルウォーターか、お茶が無難です。