アメリカのニュージャージー州立大学の研究者らは、Child Health and Development Study(CHDS)のデータを基に仕事のストレスや生活で起こったストレスフルな出来事、自覚ストレスが精液検査の数値にどのように影響を及ぼすのかを調べました。
仕事のストレスレベル(精子形成のかかる3ヶ月間)はJCQ(Job Content Questionnare)、人生における衝撃的な単発の出来事のレベルはLEI(the Life Events Inventory)、自覚ストレスレベルはPSS(the Perceived Stress Scale)によって、測定し、精液検査の結果との関連を調べました。
その結果、自覚しているストレスレベルが高いほど、精子濃度や運動率、正常精子形態率が低い傾向が見られ、過去1年間に2回以上のストレスフルな出来事があった男性は、なかった男性に比べて精子運動率や正常精子形態率が低い傾向が見られることがわかりました。
一方、仕事のストレスは精液試験の結果との関連は見られませんでした。
このことから、自覚しているストレスレベルや人生における衝撃的な単発の出来事は精子の質に関連するものの、仕事のストレスは関連しないことがわかりました。
コメント
男性のストレスと精子の質の関連についての研究はいくつかなされていますが、ストレスフルな事件や日常の自覚しているストレス、そして、仕事上のストレスの3つのストレスレベルと精液所見との関連を調べた研究ははじめてとのことです。
研究チームは、仕事が自分の思い通りにならないことや要求度が高いことから感じる職業性のストレスや人生における衝撃的な単発の出来事(事件)、そして、日常生活で感じる自覚ストレス、いずれのストレスレベルも精液検査の結果に関連するとの仮説を立てて研究に臨んだものの、結果はストレスフルな事件や自覚ストレスは精子の質の低下と関連したものの、仕事のストレスは関連しないというものでした。ただし、失業中の男性は就業中の男性に比べると、精液検査の数値が悪い傾向が見られたといいます。
そもそも、ストレスレベルを正確に測定するのは難しいものですが、いずれの測定法もその精度が検証されているとのこと。
また、今回の試験の被験者の男性は、あくまで、一般の男性で、男性不妊患者でもなければ、パートナーが不妊治療を受けている男性でもないことを知っておく必要があります。
男性不妊患者にとっては、男性不妊という診断が人生の衝撃的な出来事や日常の自覚ストレスと考えられます。
いずれにしても、あらゆるストレスが精子を悪くするわけではないこと、また、ストレスと精子の質に関連が確かめられたものの、あくまで、統計学的にそのような傾向が見られたということを理解しておくべきだと思います。