マサチューセッツ総合病院の生殖医療センターに通院しているカップルのパートナーの男性155名(18〜55歳)を対象に食物摂取頻度調査票で過去1年間の特定の食品の食べる頻度や量を答えてもらい、肉や魚の食べる頻度や量と精液所見との関連性を解析しました。
トータルの肉(加工肉、加工していない赤身の肉、内蔵、鶏肉)の食べる量と精液所見とは関連が見られませんでしたが、加工肉(ハンバーガー、ホットドッグ、ベーコン、その他の赤身の加工肉)をたくさん食べる男性ほど、正常精子形態率が低いことがわかりました。
加工肉の食べる量別に4つのグループの分けたところ、最も多く加工肉を食べる男性(1日に0.56〜2.79servings)は最も少ない男性(1日に0〜0.23servings)に比べて正常精子形態率が23.2%低かった一方で、加工していない赤身の肉や鶏肉を食べる量と精液検査の数値との関連は見られませんでした。
加工肉とは対照的に、内臓を食べる男性は正常精子形態率が高く、食べない男性に比べて24.5%高いという結果でした。
そして、魚をよく食べる男性ほど総精子数や正常精子形態率が高く、総精子数では、魚の中でもサーモンやまぐろなど濃い色の身の魚ほどその傾向が強くあらわれました。濃い色の身の魚を最もよく食べる男性(1日に0.16〜0.86servings)は最も少ない男性(1日に0〜0.03servings)に比べて51%総精子数が多く、正常精子形態率は中でも白身魚ほどその傾向が強くあらわれました。
これらのことから、加工肉を食べる代わりに、魚や内臓肉を食べることで精子の質によい影響を及ぼすかもしれないと結論づけています。
コメント
ハーバード公衆衛生大学院准教授ジョージチャバロ先生らによる食生活と男性の精子の質の関連について一連の研究の1つで、今回は肉や魚の食べる量や頻度と精液所見の関連です。
肉や魚の摂取と精子の質の関連は、脂肪酸や微量栄養素を介してのものと考えられています。
それは、「動物性たんぱくをどんな食材からどれくらい食べるか」は、脂質や微量栄養素の摂取に強く影響します。なぜなら、肉が魚を食べることは脂質や微量栄養素も一緒に摂ることになるからです。
肉を食べることは飽和脂肪酸を、魚を食べることはオメガ3系脂肪酸を、内臓を食べることはミネラル類を、一緒に摂ることになります。
要するに、飽和脂肪酸を摂り過ぎるのは精子の質には悪い影響を及ぼし、反対に、オメガ3系脂肪酸やミネラル類を十分に摂ることは精子の質によい影響を及ぼすということが言えます。
また、加工肉をよく食べるということは、ハンバーガーやホットドッグ、ソウセージなど、ファストフードや加工食品をよく食べるということになります。
そのため、食生活でどのように肉を食べるのがいいのかを考えてみると、加工食品やファストフードを食べる機会はほどほどにして、赤身の肉や脂ののった魚、レバーなどを食べることで男性の精子の質にはよい影響を及ぼすと考えてよいのではないでしょうか。
因みに、加工肉1serivingというのはハンバーガーで1個、ベーコンで2切れ、ソーセージで57gとなっています。また、加工していない肉とは具体的にメインディッシュとして供される牛や豚、そして、サンドイッチとして供されるハムなどです。