ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、1992年から2009年にかけて実施された「看護師健康調査Ⅱ(Nurese' Health Study)」に参加した看護師116,480名の中で、過去に流産の経験がなく、調査期間中に1回以上妊娠した11,072名を対象に、食事やサプリメントからの葉酸摂取量と流産や死産のリスクとの関連を調べました。
11,072名の対象者の期間中の15,950の妊娠の内、2,756(17.3%)が流産、120(0.8%)が死産に終わりました。
食物摂取頻度調査で、妊娠前の食生活やサプリメントによる葉酸摂取量を5つのグループに分けたところ、最も多く摂取していた女性(1日に851μg以上)は最も少なかった女性(1日に285μg以下)に比べて流産のリスクが9%低いことがわかりました。そして、それは主にサプリメントによる葉酸補充に関連すると考えられ、妊娠前からサプリメントで最も多く葉酸を補充していた女性(1日730μg以上)は葉酸サプリメントを利用しなかった女性に比べて流産のリスクが20%低いことがわかりました。
コメント
葉酸はDNAやRNA、アミノ酸の代謝に必要なビタミンであるため、もしも、不足するとDNAやRNAの合成が阻害され、細胞の分裂や増殖がうまくいかなくなるおそれが生じます。そのため、最も活発に細胞が分裂増殖する妊娠、出産時期には最も重要なビタミンになります。
実際に葉酸が不足すると神経管閉鎖障害の二分脊椎や無脳症のリスクが高くなることが知られており、そのため、厚生労働省では妊娠の可能性のある女性は妊娠前から葉酸のサプリメントを1日に400μg以上摂取することを推奨しています。
葉酸はその名前の通り、葉っぱものの野菜などに豊富ですが、熱に弱く、水溶性のため、水洗いやゆがくことで失われたり、吸収率が悪かったりして、食事だけでは十分な量を摂取しづらいと考えられています。
今回のハーバード公衆衛生大学院の「看護師健康調査Ⅱ」によるデータでは、サプリメントによる葉酸摂取量の多い女性ほど流産のリスクが低いことがわかりました。
もちろん、流産の主な原因は胎児側の染色体異常で防ぎようがないものの妊娠前からの葉酸サプリメントの重要性をもっと認識する必要がありそうです。