研究チームは2000年から2012年に発表された、10の携帯電話が発する電磁波と精子の質の関連研究(総精液サンプル1492)のデータを統合し、解析しました。被験者はいずれも不妊治療クリニックに通院する男性で、電磁波と精子に暴露させた試験管内の試験も含まれました。
その結果、携帯電話の電磁波によって精子運動率は平均8.1%低下し、形態的に受精能力の有する精子は平均9.1%低下するというもので、精子濃度との関連は見出されませんでした。
また、試験管内の試験でも同様の結果でした。
このことから、正常に妊娠させる力を有する男性を被験者に加えた大規模な試験の実施が必要ではあるが、携帯電話の使用は精子の質にマイナスの影響を及ぼすかもしれないとしています。
コメント
携帯電話を使うと精子の質が低下するというショッキングな研究報告ですが、論文筆者は携帯電話の発する電磁波が精子の質になんらかの影響を及ぼしていることが考えられるとしながらも、どのようなメカニズムなのかは不明で、携帯電話の使用が男性不妊症を招くというわけではないこと、また、その影響のレベルも今すぐに携帯電話の使用を止めることを勧めるようなものではないことを断っています。
現代に特有の環境が男性の精子にマイナスの影響を及ぼしているかもしれないというものです。
そういう観点で言えば、生活環境や食生活、仕事上のストレスなど、精子にダメージを与えかねないことはこれまでの多くの研究報告がなされています。
因みに、論文の筆者は、携帯電話の発する電磁波が精子に及ぼす影響のメカニズムについて、明確にはわからないとしながらも2つあって、1つは電磁波を浴びることによって活性酸素の発生が増え、酸化ストレスの上昇が精子のDNA損傷率を高め、運動率や受精能力の低下に繋がっているのではないか、そして、もう1つは、電磁波を浴びることで温度が上昇し、精巣の精子形成能力にマイナスの影響を及ぼしているのではないかと推測しています。
酸化ストレスによるDNAへのダメージも熱による精巣の機能へのダメージも、既によく言われていることです。
いずれにしても、携帯電話をやめるかどうかというよりも、酸化ストレスを軽減したり、下半身をあたためすぎないような生活が大切だという理解でよいのでないでしょうか。