運動と精液の質の関係を調べるために、スペインのムルシア大学の健康な男子学生(18〜23歳)215名を対象に、アンケート調査を実施し、精液検査の結果との関連を分析しました。
調査は過去3ヶ月間、1週間にどれくらいの時間、運動したかを回答してもらうもので、運動強度で3段階「vigrous(高強度)、moderate(中強度)、light(低強度)」にわけて、それぞれの強度の運動時間を算出し、4段階のグループにわけました。また、運動強度をメッツ(身体活動の強度を表す単位のことで運動による消費カロリーが安静時の何倍にあたるかを示す)で算出し、4段階のグループにわけ、精液検査の結果との関連を解析しました。
その結果、運動と精液検査の結果との関連は見出せませんでした。
若い健康な男性においては、運動強度と精子の質は関連せず、運動強度は精液所見からみた精子をつくる働きを弱めるというこれまでの報告とは異なる結果となりました。
コメント
運動は、トータルの健康において、若さを維持したり、生活習慣病を予防したりするうえにおいても、そして、健全なメンタルを維持するうえにおいても、重要な生活習慣の1つとされています。
運動と精子の質との関係は、これまでも多くの試験が実際されています。それらは、たいてい、運動と精子の質は関連し、たとえば、激しい運動は精子の質の低下に関連するものの、軽度から中程度の有酸素運動は反対に精子の質の高さに関連するというものでした。
ところが、今回の試験では、運動と精子の質には関連は見られなかったのこと。
従来の運動と精子の質関連研究では、そもそも、対象者は、男性不妊患者であったり、不妊治療に通院するカップルの男性であったり、特別な競技スポーツのアスリートであったりしましたが、今回はスペインの健康な男子大学生であること、また、運動習慣を数値化する方法や精度にバラツキがあること、精液検査は1回しか実施されなかったことなど、これまでの試験結果と単純に比較するのは困難です。
男性の精子をつくる働きは、多岐に渡る「もの」や「こと」に、複雑、かつ、複合的に影響を受けることから、運動習慣だけを取り出しても、精子の質との関連について整合性の高いデータにならないのではないでしょうか。
いずれにしても、健康的な生活習慣が精子をつくる働くにとっても有利であることは間違いありません。また、反対に一つの生活習慣だけで精子の質が決定されるわけでもないわけですから、それほど、神経質になることもないと言えるかもしれません。
また、今回の試験にはハーバード公衆衛生大学院のチャバロ先生も関わっていらっしゃるようです。