イランのアラク大学の研究チームは、触診できる精索静脈瘤が認められ、2回の精液検査で精子濃度や精子運動率、正常精子形態率が基準値を下回り、不妊期間が1年以上の男性不妊患者115名を対象に二重盲検試験を実施しました。
被験者をランダムに2つのグループ分け、精索静脈瘤の手術から3ヶ月後、一方のグループ(46名)にはビタミンCを1日に250mgを、もう一方のグループ(69名)にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ、3ヶ月間服用してもらい、術前と術後の精液検査の結果を比較しました。
その結果、精子濃度についてはビタミンC摂取グループとプラセボグループの間では差は見られませんでしたが、精子運動率や正常精子形態率でが、ビタミンC摂取グループはプラセボグループに比べて改善がみられ、精子運動率の手術前と手術後の差の平均は、ビタミンCグループでは20.8%、プラセボグループでは12.6%、正常精子形態率の術前術後の差の平均は、ぞれぞれ、23.2%、10.5%でした。
このことから精索静脈瘤のある男性不妊患者においては、ビタミンCの補充は手術の補助的な治療になり得るかもしれないと結論づけています。
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精索静脈瘤とは精巣の静脈が逆流して瘤のようなものができるもので、血流が悪くなることで精巣の温度が上昇し、精巣中の酸化ストレスも上昇することで、精子をつくる働きが低下してしまいます。
精子をつくる働きが低下することによる男性不妊で、原因が明らかになるケースで最も多いのが「精索静脈瘤」です。
治療は、逆流している精巣静脈の血流を遮断する手術をすることで、これによって精子の状態の改善が期待でき、術後の自然妊娠や人工授精、顕微授精の成功率が上昇します。
精索静脈瘤による血流悪化による酸化ストレスの上昇で、精子のDNAが傷つき、二重らせんがちぎれてしまい、精子DNA断片化率が上昇することがわかっています。
そして、手術で血流が改善されると、酸化ストレスの低減し、それに伴って精子 DNA断片化率も低減し、妊娠率の上昇が期待できるようになるわけですが、そこに抗酸化作用のあるビタミンCを摂取することで精子の改善をよりサポートできることを示したのが今回の研究報告です。
これまでも軽度の精索静脈瘤であれば手術を受けなくても、コエンザイムQ10のような抗酸化剤を服用することで妊娠率が改善するとの報告がなされていますが、たとえ、手術を受けたとしても抗酸化サプリメントを併用することで手術の効果を高められるということになります。