筋力トレーニングはPCOS女性の性機能を改善する

生活習慣・食事・サプリメント

2015年05月31日

The Journal of Sexual Medicine

筋力トレーニングはPCOS女性の性機能を改善することがブラジルで実施された試験で明らかになりました。

ブラジルのサンパウロ大学の研究チームは、43名のPCOS女性と51名の非PCOS女性(正常な排卵がある女性)を対象に16週間の筋力トレーニングプログラムを実施し、その前後でFSFI(女性性機能指数)とHAD分析(不安や抑うつ評価)に回答してもらい、性機能やメンタルな状態の変化を調べました。

その結果、トレーニング前のPCOS女性では43名の内、FSFIが26.55未満で性機能障害のリスクのある女性が30名(69.7%)であったのが、トレーニング後は24名(58.54%)に減り、非PCOS女性では、それぞれ、32名(62.7%)、27名(52.9%)でした。

改善内容をみると、PCOS女性では、特に、性欲の改善効果が大きいことがわかりました。

また、不安や抑うつでは、全体のスコアがPCOS女性でも、非PCOS女性でも低下しましたが、PCOS女性ではうつや不安が大きい女性はトレー二ング前後で統計学的に意味のある減り方をしました。

これらの結果から、筋力トレーニングは、PCOS女性の性欲や興奮度、潤滑度などの性機能指数を改善し、不安や抑うつスコアはPCOS女性でも、非PCOS女性でも改善することがわかりました。

コメント

超音波検査で卵巣に小さな卵胞がたくさんみられ(多嚢胞性卵巣)に加えて、排卵しづらい、あるいは、排卵しないという月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが、最新の多嚢胞性卵巣症候群の診断基準とされています。

ただ、症候群とされているように、その症状は、決して、一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向がみられることがあったり、インスリン抵抗性といって、インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす状態が、男性ホルモン値が高い背景にあることがあり、そのメカニズムはとても複雑なようです。

その一方で、PCOS女性には性機能障害やうつのリスクが高いということも言われています。

そして、排卵障害の改善をはじめ、PCOSによる諸症状は、適切な食生活の改善や運動習慣によって改善されることもわかっていました。

ただ、運動にはさまざまなやり方やレベルがありますが、この研究では筋力トレーニングの性機能やうつへの影響を調べ、それなりの改善効果が認められたとのことです。

筋力トレーニングに注目したのは有酸素運動とは違って、タンパク質やカルシウムなどの栄養素を身体に取り込んで、筋肉や骨をつくるような運動であるからとのこと。

筋力トレーニングによって基礎代謝が高くなり、PCOS女性に多い脂質や糖質の代謝異常が改善されたり、インスリン抵抗性の改善効果も有酸素運動と併用することで高まることが期待できます。

PCOSの方は、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動に、筋力トレーニングを加えてみると改善効果が高まるかもしれません。

ただし、筋力トレーニングは、最初は専門家のアドバイスのもとにメニューをつくったほうがよいと思います。