中国の北京大学第三医院の研究チームは50名のPCOS女性と30名の非PCOS女性のPCBsや有機塩素系殺虫剤、PAHs、その他20以上のフェノール類などの有機汚染物質の血中濃度を測定し、比較、解析しました。
その結果、PCOS女性のPCBsや殺虫剤、PCHsの血中濃度が非PCOS女性に比べて有意に高く、血中濃度が平均を超えている女性の割合は、それぞれ、3.81倍、4.89倍、2.39倍でした。
別の統計学的な解析でも有機汚染物質、特に、PCBsやDDEの血中濃度がPCOS女性で高いことがわかりました。
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小さな卵胞がたくさんみられる状態の卵巣のことを多嚢胞性卵巣といい、超音波検査で確認できます。ただ、多嚢胞性卵巣であるだけでは、多嚢胞性卵巣症候群とは診断されません。多嚢胞性卵巣であることに加えて、排卵しづらい(排卵障害)、あるいは、排卵しない(無排卵)という月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが、最新の多嚢胞性卵巣症候群の診断基準とされています。
症候群という名前の通り、その症状は、決して、一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向がみられることがあったり、インスリン抵抗性といって、インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす状態が、男性ホルモン値が高い背景にあることがあり、そのメカニズムはとても複雑なようです。
そして、生殖年齢にある女性の6〜10%にみられるにもかかわらず、その原因はよく分かっていません。
妊娠を目指すには、排卵障害に対して適切な治療を受けることが大切ですが、PCOS女性は流産しやすいとか、妊娠後は妊娠糖尿病になりやすい、さらには、将来、糖尿病などの生活習慣病にかかりやすいと言われており、治療に加えて運動や食生活の改善などのライフスタイルを見直すことが治療効果を高めるだけでなく、その後のさまざまな不調や病気を防ぐことにつながるはずです。
この研究では、PCOS女性はPCBやDDE(DDTの代謝物)などが高いことを確かめていますが、PCOS女性の残留有機汚染物質については、これまでいくつかの研究報告がなされていて、BPA(ビスフェノールA)が高いとの報告もあります。
研究チームは、これらの残留性の有機汚染物質は卵巣でのエストロゲンの分泌や卵胞の発育をコントロールする遺伝発現に関わる受容体やエストロゲン受容体に結合して、生殖機能を低下させるのではないかとしています。
要するに環境ホルモンとしてホルモンの分泌をかく乱し、PCOSの病態の一因になっているのではないかとのこと。
いずれにしれても、食生活を見直し、運動に取り組む際に、本来、備わっている排泄機能を高めることを意識することも大切なのかもしれません。
PCOSは戦略的な取り組みが必要なようです。