イタリアの大学病院で不妊症と診断された2,100名の男性(男性不妊、男性不妊+女性不妊)に、これまでかかったことのある病気について質問に答えてもらい、併存疾患指数(男性不妊症とは異なる病気の併発をあらわすスコア)と精液所見や生殖ホルモン値との関係を調べました。
全体では、併存疾患指数が0の男性は1,921名(91.5%)、1は102名(4.9%)、2は77名(3.6%)でしたが、総テストステロン(男性ホルモン)値や精子濃度が低い男性ほど併存疾患指数は高くなることがわかりました。
また、併存疾患指数が1以上の男性の間では乏精子症や非閉塞性無精子症の男性の割合が高いものの、精巣の大きさや精子濃度以外の精液所見は併存疾患指数とは関連性がみられず、精子濃度が1mlあたり45.6百万未満の男性は併存疾患指数が1以上になるリスクが2.74倍でした。
このことから精子濃度が少ない、総テストステロンが低い、FSH値が高いといった生殖能力の低下はトータルの健康状態の悪化に関連しているようだと結論づけています。
コメント
これまでも男性不妊と診断された男性はその他の病気を併発しやすいとの研究報告がなされています。今回の報告では精液所見では精子の数だけが他の病気を併発しやすかったとの結果ですが、アメリカで実施された同じような試験では精子濃度だけでなく、総精子数や運動率、正常精子形態率も関係しています。
また、「無精子症」の男性はその後のがん発症リスクが高い傾向にあるとの報告もなされています。
男性不妊の原因は不明とされているケースが多いようですが、たとえば、遺伝的な要因など、隠れた原因などが、他の病気を発症させるリスクを高めているのかもしれません。
であれば、精液所見が基準を下回り、男性不妊と診断された場合、不妊治療で妊娠、出産を目指すだけでなく、他の病気を予防すべく、健康な生活を心がけることが大切になってくるのかもしれません。