コペンハーゲン大学の研究チームは、高度生殖補助医療(ART)の出生児の学力に及ぼす影響を調べるために、以下のグループの9年生(15〜16歳)時点の全国学力到達度テストの成績を比較しました。
1)1995〜2000年に体外受精や顕微授精(ART)で生まれたすべての単胎児4,991人
2)1995〜2000年に体外受精や顕微授精(ART)で生まれたすべての双胎児3,260人
3)1995〜2000年に自然妊娠で生まれた単胎児から無作為に抽出した10.052人
4)1995〜2000年に自然妊娠で生まれたすべての双胎児10,833人
その結果、テストの平均スコアが最も高かったのはARTで生まれた単胎児のグループでしたが、母親の年齢や出生時体重、妊娠期間、性別、社会経済的レベルなど、学力に影響を統計学的に排除したところ、いずれのグループのスコアにも有意な差は見られないことがわかりました。
このことから、体外受精や顕微授精で生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの15歳時点での学力には違いはなく、高度生殖医療が出生児の知的能力に影響を及ぼすことはないことが確かめられました。
コメント
この研究報告はデンマークで1995〜2000年に高度生殖医療で生まれたすべての子どもと自然妊娠で生まれたすべての双胎児、自然妊娠で生まれたすべての単胎児から高度生殖医療で生まれた単胎児の2倍の人数を無作為で抽出した子どもの同じ時期の学力到達度を比較しており、これまで実施されたART出生児と自然妊娠児との学力比較研究で最も信頼できる内容になっています。
結果はART出生児と自然妊娠児の学力到達度に違いはなかったというものです。
これまでも、ARTが出生児に及ぼす影響について検証する追跡研究が行われていますが、いずれも「影響しない」ということが確かめられています。
それどころか、ART出生児が平均スコアが最も高かったというものです。
ただし、そこから子の学力に影響を及ぼすとされている因子を補正すると、差がなくなっています。
これは、子の学力到達度は、妊娠の方法というよりも、生まれてからの環境によるということを物語っています。
今後は、妊娠方法の違いだけでなく、さらに、同じARTでも、胚の凍結や胚盤胞培養などの影響がないか調べていくとのことですが、これまでの研究では、それらの影響による違いはみられないことが確かめられています。
体外受精や顕微授精に臨む際に子どもになんらかの影響がありはしないかと心配されていらっしゃる方もいるかもしれませんが、まずは、そのような心配は要らないということが言えます。