モナーシュ大学の研究グループは妊娠中のマウスを3つのグループに分け、妊娠後期に食物繊維が豊富な餌、普通の餌、食物繊維が少ない餌を食べさせ、出生児が成体になった後、ぜんそくを引き起こす原因になるチリダニに接触させました。
その結果、母親が妊娠後期に食物繊維豊富な餌を食べていたグループの子はぜんそくにかかりませんでしたが、食物繊維が少ない餌を食べていたグループの子はぜんそく症状を発症しました。
その一方で、妊娠後期に食物繊維が豊富な餌を食べたマウスの腸内細菌叢を調べると、食物繊維が消化される際に産生される抗炎症に働く物質を含む腸内細菌が存在していたことがわかりました。この物質が子宮胎盤を介して胎児に移行し、ぜんそくの発症に関わる遺伝子「Foxp3」を抑制していたことがわかりました。
そして、この動物実験で明らかになったメカニズムがヒトにあてはまるかどうかを調べるために、40名の妊娠中の女性の血液サンプルと食生活のデータを採取し、出産後の子どもの呼吸器の病気で病院を訪れた回数との関連を調べました。
その結果、妊娠中に食物繊維が豊富な食事をしていた女性の血液中には抗炎症に働く物質が存在し、その子どもが呼吸器の疾患で病院に行く回数も少ないことがわかりました。
コメント
妊娠前の食生活は、出生児の成人後の生活習慣病のリスクに関係するという「生活習慣病胎児期発症説」が有名になり、食生活や栄養の大切さが知られるようになりましたが、今回の研究は妊娠中の食物繊維の摂取状況が腸内細菌を介して、子のアレルギー体質に関係するというメカニズムをマウスでつきとめ、それをヒトでも確かめました。
小児アレルギーの発症が母親の食生活に関連するという研究はこれまでもいくつも報告されています。
そもそも、食生活は本人の長期に渡る体質を形成するファクターの1つであるわけですから、よくよく考えると、新しい命はそのスタートにおいて、胎盤の血流を通して、栄養環境を全く共有することから不思議なことでもなんでもないことがわかります。
子どもは自分の体質を選ぶことはできませんが、母親は子どもの体質の形成に関与しているわけで、そのことを知っておくことが大切だと思います。