ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で高度生殖補助医療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究で2006年にスタートして現在も進行中)に参加しているカップルの男性パートナー141名(18〜55歳)の過去1年間の肉の平均的な摂取量と246治療周期の治療成績との関係を調べました。
男性のトータルの肉の量、赤身の肉、加工肉、鶏肉、白身以外の魚、白身魚、貝、内臓肉を食べる量で4つのグループにわけました。
その結果、トータルの肉の食べる量と治療成績は関連しませんでしたが、鶏肉を最も多く食べたグループ(1日0.71〜2.82servings)は最も少ないグループ(1日0〜0.18serving)に比べて受精率が13%高い(78% VS. 65%)ことがわかりました。
また、加工肉(ハンバーガー、ホットドッグ、ベーコン、その他の赤身の加工肉)を食べる量が多くなるほど体外受精の受精率が低くなりました(82%、67%、70%、54%)。ただし、顕微授精では関連しませんでした。
また、着床率や妊娠率、出産率などの受精率以外の治療成績には関連しませんでした。
コメント
ハーバード公衆衛生大学院の研究グループはEARTH研究を通して、カップルの食生活が体外受精や顕微授精の治療成績にどのように影響するのかを精力的に研究しています。
今回、男性パートナーの肉の摂取、すなわち、どんな肉をどれくらい食べているのかが、治療成績にどのように影響するのかについての初めての研究結果が発表され、とても興味深い内容になっています。
結果は、体外受精や顕微授精の治療成績では受精率だけが関連したというものです。
そもそも、自然妊娠や人工授精と違い、体外受精や顕微授精は精子の数や運動率よりも質が問われることになり、今回のような結果になったものと考えられます。
昨年6月に男性の肉の食べる量と精液検査結果の関係を調べた研究結果を発表しています。加工肉をよく食べる男性ほど正常精子形態率が低く、反対に、魚をよく食べるほど精子濃度や正常精子形態率が高かったというものでした。
肉や魚の摂取と精子の質の関連は、脂肪酸や微量栄養素を介してのものと考えられています。それは、「動物性たんぱくをどんな食材からどれくらい食べるか」は、脂質や微量栄養素の摂取に強く影響します。なぜなら、肉が魚を食べることは脂質や微量栄養素も一緒に摂ることになるからです。
肉を食べることは飽和脂肪酸を、魚を食べることはオメガ3系脂肪酸を、内臓を食べることはミネラル類を、一緒に摂ることになり、飽和脂肪酸を摂り過ぎるのは精子の質には悪い影響を及ぼし、反対に、オメガ3系脂肪酸やミネラル類を十分に摂ることは精子の質によい影響を及ぼすということが言えます。また、加工肉をよく食べるということは、ハンバーガーやホットドッグ、ソウセージなど、ファストフードや加工食品をよく食べるということになります。