南デンマーク地域のオーデンセ市の妊婦を対象にした疫学調査(The Odense Child Cohort study)に参加し、妊娠22週までに血液サンプルを提出した妊婦1684名を対象に血中のビタミンD濃度とその後の流産のリスクの関係が調べられました。
1684名のうち59名が流産し、その内、初期(~13週6日)流産が25名、妊娠中期(妊娠14週0日~27週6日)が33名でした。
他の流産リスク因子を排除した後、ビタミンDレベルの目安である25(OH)D濃度が50nmol/L未満でビタミンDが不足している妊婦は、50nmol/L以上の妊婦に比べて初期流産のリスクが、2.5倍だったことがわかりました。ところが、妊娠中期の流産のリスクはビタミンD濃度と関連しませんでした。
このことからビタミンD不足は妊娠初期の流産リスクの上昇と関連することがわかりました。
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初期流産の原因の多くは母体のほうではなく、胎児側、すなわち、染色体異常によるものとされていて、防ぎようがありません。ところが、過度の飲酒や肥満、重いものを持ち上げたり、夜勤など、「防ぐようのある」原因が母体側にあることもあります。ビタミンD不足もその1つではないかということで今回の研究が行われました。
その結果、ビタミンD不足は初期流産のリスク上昇に関連したというものです。
そもそも、胎児は母体にとって、半分異物であり、母体の免疫反応は異物を排除しようとしますから、胎児に対しては母体の免疫反応が抑制されなければなりません。そして、ビタミンDは免疫調整に深く関わっていることから、ビタミンDが不足することで免疫調整がうまく働かなくなり、流産のリスクが高まるのではないかと考えられているようです。
ビタミンD不足による流産リスクの上昇は妊娠初期だけで、中期になると関連しなくなることから、ビタミンDが流産予防に働くメカニズムは妊娠初期特有のものではないかとされています。
この研究を実施したデンマークの研究グループは、この結果を踏まえ、今度はビタミンDのサプリメント補充が流産のリスクの低減になるのかどうか比較試験を行っているとのことです。
ビタミンDは、免疫調整作用を介しての習慣流産の予防になる可能性だけでなく、ホルモン調整因子でもあることから、不足することで体外受精の治療成績が低下したり、AMHが低くなったりと、生殖機能全般に深く関わっていることが知られるようになりました。
ビタミンD不足に陥らないためには、可能な範囲で日光浴すること、キノコや椎茸、魚などビタミンDが豊富な食品を積極的に食べること、そして、ビタミンDのサプリメントを利用することです。