ユタ大学の研究チームは全米先天異常予防研究に登録していて1997〜2009年に先天性心疾患の子どもを出産した女性(9885名)と健康な子どもを出産した女性(9468名)を対象に妊娠する前の1年間の食生活パターンを調査し、先天性心疾患の発症リスクとの関連を解析しました。
食生活パターンは食事摂取頻度調査票への記入やインタビューによって、地中海式食事度と食事の質指標(Diet Quality Index:アメリカの食事ガイドラインにどれだけそっているかの指標)の2つの指標によって評価し、それぞれの指標で4つのグループにわけました。
その結果、食事の質指標は円錐動脈幹奇形や心室中隔欠損症の発症ルスクと関連し、食事の質指標が最も高い(最も健康的な食生活パターン)グループの妊婦の子どもの円錐動脈幹奇形の発症リスクは最も低いグループよりも23%、その中でもファロー四徴症は37%低いことがわかりました。また、心室中隔欠損症の発症リスクは14%、その中でも心房中隔欠損症は23%低いことがわかりました。
これらのことから、妊娠前の食生活は、子のいくつかの先天性心疾患の発症リスクに関連することがわかりました。
コメント
先天性心疾患は出生児の100人に1人の頻度で発症していて、日本でもっとも多くみられるのが心室中隔欠損症で先天性心疾患の約60%を占めているそうです。
これまでは、葉酸やマルチビタミンミネラルのサプリメント摂取と出生児の先天性心疾患の発症リスクとの関連を調べた研究結果が報告されていましたが、葉酸を小麦粉に添加した前後で先天性心疾患の発症率が変わらなかったことから、特定の栄養素ではなく食生活のパターンで調べたのが今回の研究です。
結果は、妊娠前の食生活がアメリカの食事ガイドラインにそった食事パターンに近いほど、主要な先天性心疾患の発症リスクが低かったというものでした。
このことは、ハーバード大学の看護師健康調査で明らかになった「食生活と排卵障害の不妊症リスクとの関連」とマッチするものです。
つまり、妊娠しやすさでも、出生児の健康においても、特定の栄養素ではなく、全体のバランス、すなわち、偏りなくということが大切であるということになります。