葉酸やビタミンB12濃度と体外受精や顕微授精の治療成績

生活習慣・食事・サプリメント

2015年09月15日

Am J Clin Nutr

血中の葉酸やビタミンB12濃度が高いほどその後の体外受精や顕微授精で出産まで至る確率が高いことがアメリカの研究で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で高度生殖補助医療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究で2006年にスタートして現在も進行中)に参加している100名の女性(18〜46歳)の治療周期月経3〜9日目の血中の葉酸やビタミンB12濃度と154治療周期の治療成績との関係を調べました。

葉酸とビタミンB12濃度別に4つのグループに分けたところ、葉酸濃度が最も高かった(>26.3ng/mL)グループの女性は最も低かった(<16.6ng/mL)グループの女性に比べて出産まで至る確率が1.62倍高いことがわかりました。

また、ビタミンB12濃度が最も高かった(>701ρg/mL)グループの女性は最も低かった(<439ρg/mL)グループの女性に比べて出産まで至る確率が2.04倍高いことがわかりました。

さらに、葉酸とビタミンB12濃度がいずれも中央値を超える女性は、いずれも中央値以下の女性に比べて出産まで至る確率が1.92倍高いこともわかりました。

このことから、葉酸やビタミンB12の血中濃度が高い女性ほど、その後の体外受精や顕微授精で出産まで至る確率が高く、葉酸やビタミンB12濃度は高度生殖補助医療の成功率に関連することがわかりました。

コメント

ハーバード大学の研究グループは、同じEARTH研究で、食事やサプリメントによる葉酸摂取量と体外受精の治療成績との関係を調べ、葉酸摂取量が多いほどその後の治療成績が良好であることを確かめていました。

そして、葉酸や同じビタミンB群のビタミンB12と治療成績の関連をより正確に調べるべく、今回は血中の葉酸やビタミンB12濃度を測定し、治療成績との関係を調べ、前回の研究結果と同様に葉酸やビタミンB12濃度が治療成績と関連することを明らかにしました。

そもそも、葉酸は生殖細胞の分裂増殖の際にDNAの正確な複製に不可欠な役割を担うことから、葉酸が不足すると胎児の神経管閉鎖障害などの先天異常のリスクが上昇することがわかっています。

そのため、葉酸は受精卵や胚の正常な発育に深く関与しているはずで、葉酸濃度は高度生殖医療の治療成績に関連するのではないかと考えられていました。また、葉酸やビタミンB6やビタミンB12は、アミノ酸の代謝にも関わっていることも知られており、不足すると悪玉アミノ酸「ホモシステイン」濃度は高まり、胚の正常な成育の障害になり、流産や早産のリスクを高めるとのデータがあり、ビタミンB群濃度も治療成績に関連するのではないかと考えられるわけです。

ところが、ヨーロッパで行われた一連の研究では、いずれも葉酸の摂取量や血中濃度と治療成績は関連しなかったというものでした。

ハーバード大学の研究者は、同大学とヨーロッパの研究結果が異なった主な原因として、研究方法の違いを挙げ、ヨーロッパの研究では全ての治療周期を対象としておらず、胚移植のみを対象にしているため、葉酸不足のために正常な受精や卵割が障害された周期があったのではないかと指摘しています。また、アメリカでは小麦粉に合成葉酸の添加が義務づけられており、そもそも、葉酸の摂取量のベースが高いことも関係しているのではないかとの見解を示しています。

いずれにしても、葉酸やビタミンB群は妊娠、出産に際して重要な役割を担う栄養素ですので、偏りのない食生活を心がけ、不足を予防するべく、マルチビタミンなどのサプリメントで補充することが大切です。