食事パターンと精巣の働き(精子の質や生殖ホルモン、精巣の大きさ)との関係を調べるために、2010年10月から2011年11月にスペインのムルシア大学の男子大学生(18〜23歳)を対象に環境や生活習慣が男性の生殖機能に及ぼす影響を調べることを目的に実施された「ムルシアヤングメンズスタディ」で得られたデータを解析しました。
209名の男性に食物摂取頻度調査票(過去1年間にどんな食品をどれくらいの頻度でどれくらいの量を食べたかを尋ねる質問票)に答えてもらい、地中海食と西洋式食にどれだけ近いかで、それぞれ4つのグループに分け、精巣も働きとの関係を調べました。
BMIや喫煙習慣の有無、禁欲期間などの影響を調整した結果、食事パターンが地中海食に近いほど精子数が多い傾向にあり、最も地中海食度が高い食事パターンの男性は最も地中海食度が低い男性に比べて総精子数が51.5%多いことがわかりました。
一方、食事パターンが西洋型に近いほど精子正常形態率が高く、最も西洋型度が低い男性に比べ西洋型度が高くなるに従って精子正常形態率が16.6%、33.6%、58.1%、それぞれ高くなることがわかりました。ただし、関連はBMIが25以下の男性にしか見られず、BMIが25以上の男性では見られませんでした。
また、西洋型食事パターンと総精子数の関係では、BMIが25以上の過体重や肥満男性においてのみ、西洋型食事パターン度が高くなるほど総精子数が少ないことがわかりました。
これらのことから伝統的な地中海食は男性の生殖機能に良好な影響を及ぼすことが示唆されました。
コメント
最近、食事パターンと精子の質についての研究結果が相次いで発表されています。
ギリシャで体外受精を受けているカップルの男性パートナーを対象にした試験では地中海式食事パターン度が高い男性ほど精子濃度や総精子数、運動率が良好であったと報告しています。
そして、台湾の健康な男性を対象にした試験では西洋式食事は精子濃度や正常精子形態率の低下、スイーツやスナック菓子、砂糖入り清涼飲料水は精子濃度の低下、そして、高炭水化物食は精子運動率の低下と、ぞれぞれ関連したと報告しています。
このように、人種や地域、不妊治療患者かどうか、そして、食事パターンの定義が、それぞれの研究によって異なるためか、相反する結果も見受けられます。
ただし、野菜や果物、精製度の低い穀物、魚をよく食べると精子の質にはよいことは共通するようです。