男性不妊の男性は精巣がんの発症リスクが高い

基礎知識

2015年11月29日

Fertility and Sterility

男性不妊の検査や診察で専門クリニックを受診した男性は、正常な男性に比べて精巣がんなどの発症リスクが高いことがアメリカの研究で明らかになりました。

1996年から2011年にユタ大学のアンドロロジー(男性科)クリニックを男性不妊検査や診療で受診した男性20,433名と同じ年齢の正常な男性20,433名のがんの発症リスクを比べました。

全体で421名ががんに発症しており、最も多かったのがメラノーマ、その次が前立腺がん、精巣がんの順でした。

そして、男性不妊の男性はそうでない男性に比べて精巣がんの発症リスクが3.3倍高いことがわかりました。男性不妊の男性を精液検査の各項目別にみると乏精子症の男性は精巣がんの発症リスクが特に高く、11.9倍でした。運動率や正常精子形態率が低い男性でも6.6倍、4.2倍とリスクの上昇がみられました。

その一方で、無精子症の男性はがんの発症リスクにおいて差が見られませんでした。また、前立腺がんの発症リスクには男性不妊の男性とそうでない男性の間で差は見られませんでした。

また、このことから男性不妊の検査や診察を受けた男性は妊娠させる力が正常な男性に比べて精巣がんの発症リスクが高くなる可能性がある一方で、無精子症の男性はがんの発症リスクに関連しないことがわかりました。

コメント

これまでも男性不妊と精巣がんの発症リスクの上昇は関連するとの研究報告がなされていましたが、精液検査の各項目の結果ごとで比較した試験は初めて実施されたとのこと。

その結果、乏精子症と精巣がんの発症リスクが最も高かったものの、無精子症では関連はみられなかったとのことです。

精子をつくる働きが低下することが最も強く関連したということになります。

もちろん、どのようなメカニズムでそのような関連がみられるのか、その因果関係は調べていませんし、わかりません。

ただし、がんの発症の含めて、精子をつくる働きの低下は死亡率の上昇とも関連するとの報告があります。

精液検査の結果が悪かった場合、どのように妊娠を目指すのかに、当然、関心がいきますが、男性の健康の注意信号として受け止めるべきなのかもしれません。

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