テキサス大学の研究者らは、原因不明の習慣性流産カップルの男性パートナー26名と、その比較対照グループとして妊娠させる力が正常であることが確かめられている男性31名に48〜72時間の禁欲後に精液検査と精子断片化率検査を実施しました。
精液検査の結果がWHOの基準を満たすサンプルだけを対象にグループ間のDNA断片化率を比較しました。
その結果、原因不明の習慣性流産カップルの男性パートナーのグループの平均の精子DNA断片化率(36.8±5)は比較対象グループのそれ(9.4±2.7)比べて高いことがわかりました。
このことから習慣性流産のカップルの男性パートナーでは、たとえ、精液所見が正常でも精子DNA断片化率が高いことがわかりました。
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精子の頭部には「核」があり、その中に父親になる男性の遺伝情報が含まれるDNAの半分が入っています。一方、卵子にも「核」があって、母親のなる女性の遺伝情報を含むDNAの半分が入っています。受精するということは卵子の中に精子が侵入するということですが、厳密に言えば、精子の核と卵子の核が融合して、父親のDNAの半分と母親のDNAの半分が一緒になって、子どものDANになるということです。
受精が成立するか、そして、受精後の卵割が正常に進み、出産までいけるかどうかは、精子と卵子のDNAが健全である、すなわち、損傷していないことが要件になります。もちろん、受精卵にはDNAを修復する機能が備わっていて多少の損傷は修復されるようですが、DNAの損傷は受精障害や受精卵の発育障害、流産などのリスクの上昇を招くわけです。
今回、原因は特に見当たらないのだけれども流産を繰り返す、原因不明の習慣性流産のカップルの男性パートナーの精子DNA断片率をお子さんを授かることで妊娠させる力が正常であることがわかっている男性のそれと比較しています。
その結果、たとえ、精液検査の結果に問題がなくても原因不明の習慣性流産の男性パートナーは精子DNA断片化率が高かったといのです。
このことは、男性の精子DNAの損傷が習慣性流産のリスクを高めている可能性があることを示唆しています。
精子の損傷は活性酸素のダメージによるものと考えられています。そして、DNAの損傷、すなわち、精子の質の低下は、禁欲期間を長くしない(精液を溜めすぎない)こと、CoQ10やビタミンCやEなどの抗酸化サプリメントを摂取し、生活習慣を見直すことで、ある程度、防げることもいくつもの研究でわかってきました。
そのため、原因不明の習慣性流産はメンタルなケア以外に有効と考えられる治療法がないわけですから、男性パートナーは、たとえ、精液検査に問題なくても、精子の質を低下さえないようにセルフケアに留意することも大切なことかもしれません。