PCOS女性の子は自閉症発症リスクが高い

不妊原因になる病気

2015年12月10日

Molecular Psychiatry

PCOSの母親の子はそうでない子に比べて自閉症の発症リスクが高いことがスウェーデンで実施された試験で明らかになりました。

カロリンスカ研究所の研究チームは、1984年から2007年にスウェーデンで生まれた子どもで自閉症と診断された23,748名と自閉症でない208,796名を対象に母親のPCOSと自閉症の発症リスクの関連を調べました。

その結果、母親がPCOSである子どもはそうでない子どもに比べ、自閉症の発症リスクが関連するその他の関与を排除しても59%高いことがわかりました。

また、肥満が伴うPCOSは子の自閉症発症リスクがさらに高くなることもわかりました。

これらの結果からPCOSと子の自閉症発症リスクの上昇が関連することがわかりました。

コメント

自閉症は、その文字から受ける印象が強いこともあってか、なかなか正確な理解が得られないことが多いようです。

東京都自閉症協会のサイトには、「自閉症とは、先天的な原因から、対人関係の特異性やコミュニケーションの質的障害、イマジネーションの質的障害という3つに特徴があらわれることから診断される障害で、「自閉」という言葉からイメージされる「自らこころを閉ざしている病気」ではありません。また、育て方によって、後天的になるものでもありません。原因は、まだ不明ですが、さまざまな所見や遺伝的研究から、先天的な脳機能の違いが原因となる障害だと、考えられています。自閉症は、重度の知的障害を合併している人から、知的な障害がほとんどない人、IQ(知能指数)が通常より高い人まで幅広く、その個性も多様です。どこからどこまでが「知的障害」、どこからどこまでが「自閉症」と区切れるものではなく、まるで虹の光のように連続していることから、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder:ASD)といわれます。」との説明があります。

だいたい1,000人に一人から二人の割合で生まれてくると言われています。また、自閉症のうち、5人に4人は男の子とされています。

今回、全国規模の疫学調査を実施したスウェーデンの研究者らは、自閉症発症の要因リスクの1つに母親のお腹の中の高い濃度の男性ホルモンがあるのではないかとの仮説を立て、PCOSの女性は妊娠中も男性ホルモンのレベルが高いことからこの研究を計画したとのこと。

その結果、PCOSの女性の子どもはそうでない子に比べて自閉症の発症リスクが高いことがわかりました。

そもそも、自閉症の原因そのものがわかっていません。また、今回の研究でその原因が胎内の男性ホルモンレベルにあるのかが確かめられたわけではありませんが、たとえば、PCOS女性の中でもより男性ホルモンレベルが高いと肥満を伴う女性では、発症リスクがより高かったため、男性ホルモンが介在しているのではと考えられているようです。

PCOSは糖尿病などの生活習慣病の前段階であると言われていて、食生活や運動等でその程度を軽減できることもあります。また、さまざまな妊娠、出産リスクの上昇とも関連することがわかっています。そのため、妊娠するためだけでなく、健康な妊娠、出産、さらには、子の健康や自分の将来的な健康のためにも生活習慣を整え、ホルモンバランスを改善しておくことがとても大切なことと思います。