アメリカ国立衛生研究所の小児保健発育研究所の研究チームは、ニューヨーク州(ニューヨーク市を除く)で2008〜2010年に生まれた子ども5,841名とその母親4,824名を対象に不妊治療と子どもの3歳までの発達の関係を調べました。その内訳は、一般不妊治療や体外受精、顕微授精を受けて子どもを妊娠、出産した母親1422名とその子ども1,830名、自然妊娠で子どもを出産した母親3,402名とその子ども4,011名でした。
子どもの発達障害の選別は、子どもが、生後4ヶ月、8ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、2歳、そして、3歳の時点で、親に子どもの発達に関する国際的な質問票(the Ages and Stages Questionnaires)に記入してもらい、5つの領域(指先や手先の運動、体全体の運動、コミュニケーション、社会参加や生活機能、問題解決能力)のスコアによってなされました。そして、不妊治療の有無や治療内容との関係を解析しました。
その結果、不妊治療によって生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どものスコアに大きな違いはありませんでした。
ただし、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療(ART)で生まれた子どもは5つの領域のいずれか、特に、社会性や問題解決能力に障害があるリスクが高いことがわかりました。ところが、双子の割合がARTで生まれた子ども(34%)のほうが自然妊娠で生まれた子ども(19%)に比べて高く、出生時体重で調整したところ、発達障害があるリスクは低くなり、単胎児と双胎児にわけて比べたところ差はみられなくなりました。また、不妊治療内容による差もありませんでした。
さらに、3〜4歳時点で発達障害と診断された割合も、不妊治療で生まれた子ども(13%)と自然妊娠で生まれた子ども(18%)の間で差はみられませんでした。
コメント
体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療の出生児の神経の発達への影響については、ヨーロッパのいくつかの国では調査されています。概ね、「影響はない」という結果ですが、顕微授精の出生児は知的障害のリスクがわずかに高かったとのスウェーデンの研究報告があり、高い関心をもって継続した調査が続けられています。
子どもの神経発達、その後の身体の運動能力や学力には、生活環境も含めてさまざな要因が影響することから、純粋に生殖医療の影響を調べることが難しいところがあるようですが、今回の研究では一般不妊治療も含めて、体外受精や顕微授精出生児の神経発達は、自然妊娠出生児と遜色がないというものでした。
これまでの研究結果から言えることは、生殖医療の出生児の脳の発達へのマイナスの影響については心配ないというものです。