大気汚染と不妊症の関係

妊孕性に影響する因子

2016年01月28日

Human Reproduction

幹線道路の近くすむことや長期間に渡ってPM2.5濃度の高い地域に住むことが不妊症の発症リスクの上昇に関連することが大規模な疫学調査「看護師健康調査Ⅱ(Nureses' Health StudyⅡ」から明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、NHSⅡに登録している25〜42歳の女性看護師36,924名を1989〜2003年まで追跡し、試験開始時、その後は2年毎に質問票に回答してもらい、妊娠希望の有無や不妊期間を調査、大気汚染と不妊症(妊娠希望後1年以上妊娠に至らない場合)との関連を解析しました。

大気汚染は幹線道路から家までの距離、アメリカ合州国環境保護庁の粒系PM(粒子状物質)の質量濃度を用いました。

その結果、調査期間中の不妊症女性は2,508名で、大気汚染と不妊症発症リスクの関連は、汚染物質や測定方法によって一様ではないものの、幹線道路から近く(199メートル以内に)住んでいる女性は、それほど近くない(200メートル以上)ところに住んでいる女性に比べて、不妊症発症リスクが他の要因の影響を排除した後も11%高いことがわかりました。

このことは、一人目不妊でも(5%)、二人目不妊でも(21%)、同様の関連性がみられました。

また、粒子状物質(PM)による汚染レベルとの関連については統計学的な差は出ませんでしたが、他の要因の影響を排除する前では、住んでいる地域のの累積のPM10、PM2.5-10、PM2.5の質量濃度が10μg/m3増える毎に、不妊症発症リスクがわずかに上昇し、粒径が小さくなるほど高い(それぞれ、10%、14%、15%)ことがわかりました。

これらのことから、NHSⅡで得られたデータから、幹線道路の近くに住むこと、また、長い期間、PM2.5の汚染濃度が高い地域に住むことは、不妊症の発症リスクに関連することがわかりました。

コメント

大気汚染とは、車や工場からの煙に含まれる汚染物質「窒素酸化物 (NOx)や粒子状浮遊物質(PM)、二酸化炭素(CO2)等」空気が汚れることをいいますが、PM2.5は、は中国の大気汚染で知られるようになりました。環境省のサイトでは、「大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことで、従来から環境基準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子状物質(SPM:10μm以下の粒子)よりも小さな粒子です。PM2.5は非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が心配されています。」と説明されています。

因みに、汚染物質の濃度は、毎日、20分から60分おきに測定値が速報として公開されていて、上記のサイトから都道府県別の現在の状況【速報値】へのリンクがあります。

そもそも、大気汚染が人間の健康に影響を及ぼすのは、まずは、呼吸器や循環器であり、不妊症は間接的なものになるはずですが、これまで、大気汚染と体外受精の治療成績や男性の精液所見が関連したとの研究報告がなされています。

原因やメカニズムは不明で、あくまでも相関関係があったというものですが、NHSⅡという大規模で長期に渡る追跡によるデータで、信頼できる方法で統計学的な解析がなされています。

住まいや環境は、すぐには変えることができませんし、神経質になる必要はないと思いますが、人間にとって、空気は絶対になくてはならないもので、私たちが生きていくうえでは最も大切なものです。バランスのよい食生活や運動、複式呼吸法で、身体に備わった排泄能力を高めることも大切なことなのかもしれません。

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