研究は、LIFE Study(*)のデータをもとに行われました。LIFE Studyに参加した妊娠を希望するカップル501組のうち研究期間中に単胎妊娠した344組のカップルを対象に、妊娠前から妊娠時、妊娠初期のカップルのライフスタイル(タバコ、カフェイン、アルコール、マルチビタミンサプリメント)と流産の関係を調べました。
カップルのライフスタイルは、喫煙やカフェイン入りの飲み物、アルコール、そして、マルチビタミンのサプリメントの摂取について、毎日、記録してもらい、その後の流産の有無との関連を解析しました。
その結果、98組のカップルが流産し、女性の年齢が35歳以上であること、また、カップルが妊娠前から1日に2杯以上のカフェイン入り飲料を飲むことが流産のリスク上昇に、反対に、女性が妊娠前からマルチビタミンミネラルのサプリメントを摂取することが流産のリスク低下に、それぞれ、統計学的に有意に関連しました。
研究チームは、妊娠を希望するカップルにはこれらの結果を踏まえた情報提供が必要であると結論づけています。
*)LIFE研究とは?
アメリカ小児健康・人間発達研究所による「The Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment (LIFE) Study」のことで、501組の妊娠を希望するカップルを2005年から2009年まで追跡調査し、PCBやPBDEs、PFOSなどの環境中の化学物質やライフスタイルが妊娠しやすさや生殖器官の働きにどのように影響を及ぼすのかを調べることを目的とした縦断研究。これまでにも多くの論文が発表されています。
コメント
今回の研究は、あくまで、ライフスタイル(タバコ、カフェイン飲料、アルコール、マルチビタミンサプリメント)は流産のリスク要因になり得るのか、また、どの程度影響するのかについて調べたもので、決して、流産の原因を調べたものではありません。
そのため、妊娠前からカップルが1日に2杯以上でカフェインを飲み、女性がマルチビタミンのサプリメントを摂取しなければ、必ず、流産するというわけではありません。また、妊娠前からカップルで1日でカフェインを控え、女性がマルチビタミンのサプリメントを摂取すれば流産が防げるというわけでもないということを理解しておく必要があります。
流産のリスクに最も影響するのは女性の年齢です。また、その原因としては胎児側の染色体異常によるもので、いずれも予防できないもので、自然淘汰によるものです。ですから、一定の確率で起こりえるものとして受け入れざるを得ません。ただし、母体側に何らかの原因があって流産が繰り返される場合は不育症の専門医による検査や治療が必要です。
その上で、少しでも流産のリスクを低くするために「自分たちにできること」として、妊娠前からカップルが飲むカフェイン飲料は1日に1杯以下ににすること、そして、女性がマルチビタミンミネラルのサプリメントを摂取するとよいということです。
この研究はアメリカ国立小児健康・人間発達研究所の研究者らが実施したもので、特徴としては、縦断研究ということである特定の時点ではなく、妊娠前、妊娠前後、妊娠初期の3つの時点における、母親になる女性だけでなく、父親になる男性のライフスタイルと流産リスクとの関係を調べていることです。
これまで、カフェインの摂取が流産のリスクを上昇させ、ビタミンやミネラルの補充はリスクを低減させるとの報告はありましたが、妊娠前の男性のカフェイン摂取も流産のリスクの上昇に関連するというのは初めての報告となったとのこと。