南デンマーク大学の研究グループは、南デンマーク地域のオーデンセ市の妊婦を対象にした前向きコーホート研究(The Odense Child Cohort study)に参加した女性からさい帯血を提供してもらい、ビタミンD(25(OH)D3)レベルを測定し、その子が2-4歳になった時点で、両親に「子どもの行動チェックリスト」に回答してもらい、さいたい血中のビタミンDレベルと子のADHD(注意欠陥/多動性障害)の症状との関連を解析しました。
1,233組の母子のデータが得られ、子の平均年齢は2.7歳、平均のADHDスコアは2.7でした。ADHDスコアが90パーセンタイル(スコアが低いほうから数えて90%の位置にあたる値)以上とさい帯血中のビタミンDの低レベルや母親の低年齢、低学歴、そして、妊娠中の母親の喫煙や飲酒に関連しました。
そして、さい帯血中のビタミンDが25nmol/L以上だった子どものADHDスコアは25nmol/L未満だった子どもに比べて低く、30nmol/L以上だった子どもも30nmol/L未満だった子どもに比べてスコアが低いことがわかりました。
また、ADHDスコアが90パーセンタイル以上になる確率はビタミンDレベルが10nmol/L増えるごとに低くなりました。
このことから、さい帯血中のビタミンDの低レベルは子のADHDの症状に関連することがわかりました。
コメント
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び(又は)、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの」と定義されています(文部科学省)。
これまでビタミンDレベルの低い子どもとADHDに関連するとの研究報告があったことから、今回の研究が実施され、さい帯血中のビタミンDの低レベルとその子のADHD症状が関連するという結果でした。
ただし、これをもって、ビタミンDの不足がADHDの原因であるということは言えません。
研究ではさい帯血中のビタミンDレベルとチェックリストによるADHD症状のスコアとの関連を調べたもので、決して、医師による診断がなされたわけではなく、また、そもそも、ADHDは明確な原因はわかっていませんし、さまざまな因子が関与するとされています。
そのことを理解した上で、妊娠、出産、そして、子の健康においてもとても大切な役割を担うビタミンDは、葉酸と同様、ビタミンDも不足しないようにサプリメントで補充することが大切であると研究グループはアドバイスしています。