ノッティンガム大学の研究グループは、クリニックで体外受精に臨む135名の女性(平均年齢34.5歳)を対象に、体外受精の開始前の唾液中と毛髪中のコルチゾールを測定し、その後の治療成績との関連を解析しました。
体外受精の治療周期開始前に、1日に3回(起床直後と起床30分後、夜の10時)、2日間の唾液を測定キットで採取してもらい、唾液中のコルチゾールを測定、また、その中の88名は、クリニックで毛髪をカットし、毛髪中のコルチゾールを、それぞれ、測定し、その後の妊娠率との関連を解析しました。
その結果、試験期間中(2012年12月から2014年4月)に60%の81名の女性が妊娠しましたが、唾液中のコルチゾールの分泌量の4つの指標は、いずれも妊娠率とは関連しませんでした。
それに対して、毛髪中のコルチゾールレベルは妊娠率は有意に関連し、毛髪中のコルチゾールレベルが高いほど妊娠率が低いことがわかりました。年齢やBMI、採卵数、受精卵数など妊娠率に影響を及ぼす他の因子を調整後の毛髪中のコルチゾールが影響すると考えられる妊娠率の差は27%でした。
これらのことから、ストレスレベルの治療成績への影響を調べるには、短期(1日)のストレスホルモンレベルではなく、長期(3-6ヶ月)のレネルに注目する必要があることが示唆されたと結論づけ、体外受精に臨む女性へのメンタルなサポートにおいても、そのことに留意すべきだとしています。
コメント
コルチゾールはストレスに関連するホルモンとして知られています。そのため、ストレスと不妊治療成績との関連を調べた研究では、ストレスレベルの指標として、唾液中や血液中、尿中、卵胞液中のコルチゾールを測定しています。
ところが、これまでの研究では、それらのコルチゾールレベルが高いほど、治療成績が低くなるというものもあれば、反対に高くなるというものもあり、一貫していないことから、明確な結論は得られていません。
今回の研究グループは、その理由として、コルチゾールは朝に高く、夜に低くなるという分泌リズムがあり、変動するものであること、また、唾液や血液、尿などのコルチゾールレベルは、1、2日の短期間の状態をあらわすものだからではないかと考え、唾液中のコルチゾールの他に毛髪中のコルチゾールレベルも測定しました。
毛髪中のコルチゾールは3ヶ月から6ヶ月の状態をあらわすからです。
その結果は、唾液中のコルチゾールと妊娠率は関連しなかったけれども、毛髪中のコルチゾールと妊娠率は関連したというものです。
つまり、短期のストレスレベルは妊娠率に関係なく、長期のストレスレベルが問題だというわけです。
不妊治療中のストレス対策を考える場合、とても参考になる知見ではないでしょうか。