不妊クリニック通院カップルの男性パートナーの地中海食スコアと精子の質

生活習慣・食事・サプリメント

2016年11月18日

Human Reproduction

不妊クリニックに通院しているカップルの男性パートナーの食習慣が地中海食に近いほど、精子濃度や総精子数が多く、精子運動率が高いことがギリシャで実施された研究で明らかになりました。

ヘロコピポ大学の研究チームは、2013年11月〜2016年5月に、アテネの不妊クリニックに通院していたカップルの男性パートナー225名(26-55歳)を対象に、食事習慣が地中海食に近いことと精子の質に関連があるかを調べました。

食物摂取頻度調査票に記入してもらい、習慣的な食事摂取状況を調べ、地中海食スコアを算出して、スコアが低いグループ(30以下)、中のグループ(31-36)、高いグループ(37以上)の3グループに分け、精液検査結果との関係を調べました。

その結果、スコアが低いグループは、高いグループに比べて、精液検査結果が基準を下回る割合が有意に高いことがわかりました。
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表)地中海食スコアと精液検査結果が基準値を下回った男性の割合


また、精液検査結果に影響を及ぼす因子(年齢、喫煙、運動、ストレス、総エネルギー摂取量、学歴、収入、家族歴)を調整後でも、スコアが低いグループは高いグループに比べて精子濃度や総精子数、運動率が基準を下回る男性の割合が2.6倍高いことがわかりました。

これらの結果から、不妊クリニックに通院するカップルの男性パートナーの食事習慣が地中海食に近いほど精子濃度や総精子数、精子運動率が高い傾向にあることが認められました。

コメント

食習慣は、男性の精子の質に関連することが、これまでの多くの研究で確かめられています。そのことは、特定の栄養素や食品ではなく、食習慣、すなわち、食べ方の傾向が精子の質の関連するということを意味します。

そして、これまで最も研究されている食習慣は「地中海食」です。地中海食は、あらゆる生活習慣病のリスクの低減に関連し、健康食、長寿食と言われています。

たいていの研究では、食習慣の「地中海食度」、すなわち、食習慣がどれだけ地中海食に近いかを「地中海食スコア」で評価しています。地中海食スコアとは、食習慣がどのくらい地中海食に近いかを数値化したもので、スコアが大きいほど地中海食に近いことを意味します。

算出方法は、地中海食に関連する11種類の食品の摂取量や摂取頻度を6段階(0-5)で点数化し、それを合計(0-55)します。11種類の食品は以下の通りです。

・多く食べるほどスコアが高くなる食品:無精製穀物(全粒穀物、全粒粉パン、全粒粉パスタ、玄米他)、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
・多く食べるほどスコアが低くなる食品:赤身肉や鶏肉、全脂肪乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)、アルコール

要するに、地中海食とは、精製度の低い穀物を主食にして、野菜や果物、豆類、魚を多く、オリーブオイルを使い、肉類が少ないという食べ方ということになります。

実は、和食にとても近い食べ方で、和食に野菜や果物を増やすことで地中海食になります。どちらも、抗炎症、抗酸化に働く栄養素を多く摂り、油が健康的ということが共通します。

今回の研究は不妊クリニックに通院しているカップルの男性パートナーを対象としており、その他の特徴としては、約半分が肥満傾向にあり、喫煙率が約20%と、決して、健康的なほうではありません。そのためか、これまでの食事パターンと精子の質を関連を調べた研究に比べても、地中海食に近いほど精子の質が高いという傾向が明確に出ているようです。

ただし、あくまで関連が認められたという研究であって、地中海食に近い食習慣に改善すれば精子の質が高くなることが確かめられたというわけではありませんが、お子さんを望まれるカップル、特に、不妊治療を受けているカップルにとっては、あくまで、「間接的」ではありますが、卵子や精子を悪くしない「食べ方」として、地中海食はとても参考になると思います。