アメリカのデラウエラ大学の研究者らは、雄のネズミとPMCA4(精子鞭毛に発現し、精子超活性化や受精の能力に重要な役割を果たす酵素)の発現遺伝子を欠損させ、人為的に作成した男性不妊のネズムを用いて、くるみの摂取と精子の質や受精能力の関係を調べました。
それぞれのネズミを無作為に2つのグループに分け、一方には、餌に総カロリーの19.6%(人間で毎日約75gのくるみを食べることに相当)のくるみを配合し、もう一方にはくるみを配合しませんでした。9-11週間後、精液所見や受精能力を比較しました。
その結果、正常なネズミでも、不妊ネズミでも、くるみを食べたグループで脂質過酸化反応が有意に低減し、脂質の酸化が抑制されました。
正常なネズミではくるみを食べたグループは食べなかったグループに比べて精子運動率や正常形態率が有意に改善されました。一方、男性不妊のねすみでは正常形態率にみが有意に改善されまた。
男性不妊のネズミでは受精能力の回復は認められませんでした。
このことからくるみを食べることで精子の細胞膜の脂肪酸の酸化を抑制することで精子の質の改善に寄与する可能性が示されました。
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くるみはナッツ類の中でも実全体の70%が脂質でその70%が多価不飽和脂肪酸(オメガ3やオメガ6系脂肪酸)で、オメガ3とオメガ6が1:4と理想的な割合で含まれていることが知られています。また、ポリフェノールやメラトニンなどの抗酸化物質の他、ビタミンやミネラル、食物繊維、たんぱく質が豊富で、とにかく、健康によいナッツとして注文されているようです。
これまで、若い健康な男性117名を対象に1日に75gのくるみを食べてもらったところ精子の運動率や正常精子形態率、そして、受精能力が改善されたとのUCLAの研究グループによる研究報告がなされています。
今回の研究はネズミを使って、そのメカニズムもあわせて検証することを目的に実施されました。
くるみを1日75グラムを目安に食べることで、精子の細胞膜の脂質の酸化が抑制され、運動率の改善が期待できるかもしれません。