高温相の長さと妊娠しやすさとの関係

妊孕性に影響する因子

2017年04月01日

Fertility and Sterlity 2017; 107: 749

短い高温相は短期的に妊娠にマイナスの影響を及ぼすかもしれませんが、単発であれば1年でみれば妊娠率には影響しないことがアメリカで実施された試験で明らかになりました。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームは、不妊症の既往がなく、妊娠を望む女性を対象に高温期の長さと妊娠しやすさとの関係を調べました。

子づくりをはじめて3ヶ月以下の30-44歳の女性に、月経開始日や排卵の目安になる情報(頸管粘液スコアや基礎体温、排卵検査薬の結果)、妊娠検査薬の結果を妊娠に至るまで、最長1年間記録してもらい、11日以下の高温相の妊娠確率への影響を調べました。

対象となった284名の1,635周期中で平均の高温相の長さは14日で、高温相が11日以下だったのは18%でした。短い高温相があった女性はなかった女性の比べて喫煙率が有意に高い(6% vs. 1%)ことがわかりました。

年齢による影響を調整した結果、高温相が短かった女性のその直後の周期の妊娠確率は18%低下しましたが有意な差ではありませんでした。記録を開始した最初の周期の高温相が11日以下だった女性はその後半年間の妊娠確率は有意に低かったものの、12ヶ月間の累積の妊娠確率では有意な差はみられませんでした。

この結果から、単発の高温相の短さはその後の妊娠率にマイナスの影響を及ぼすかもしれませんが、1年間の妊娠率には影響しないことがわかりました。

コメント

高温相(黄体期)は黄体(排卵後の卵胞)からプロゲステロンが分泌され、基礎体温が上昇することではじまり、妊娠が成立しなかった(胚の着床が起こらなかった)場合に、黄体は小さくなり、機能が低下するとプロゲステロンが産生されなくなり、その結果、子宮内膜が剥がれ落ち、月経の開始で終了します。

高温相は14日間とされていますが、プロゲステロンの分泌が不十分で、子宮内膜が着床に適した状態にならない状態を黄体機能不全と診断されることがあり、その場合の高温相の長さの目安が11日以下とされています。

ただし、黄体機能不全の定義があいまいなところがあったり、その診断や治療方法も確立されていなかったりし、そもそも、黄体機能不全が妊娠成立にどの程度影響するのかについて明確な結論が得られていないため、今回の研究が実施されました。

黄体機能不全は不妊症の原因になるとか、高温相が短いことを心配されることが多いように思いますが、高温相の短い周期があっても、一定の期間でみれば、妊娠しやすさにはそれほどの影響はないということになります。