卵胞液中のメラトニン濃度はART成績や卵巣予備能の指標になり得る

妊孕性に影響する因子

2017年05月13日

Reproduction 2017; 153: 443

卵胞液中のメラトニン濃度は卵子の量や質を反映し、体外受精治療成績や卵巣予備能を予測する指標になる可能性があることが中国で実施された試験で明らかになりました。

上海交通大学の研究者らは、61名の体外受精や顕微授精患者を卵巣刺激に対する卵巣の反応で3つのグループ(poor、normal、high)にわけ、卵胞液中のメラトニン濃度との関係を調べました。

その結果、メラトニン濃度は年齢やAMH(アンチミューラリアンホルモン)値、FSH基礎値、その他の卵巣予備能の指標と有意に関連しました。

また、体外受精の成績とも有意に関連し、卵胞液中のメラトニン濃度が高いほど、採卵数や受精卵数、分割胚、良好初期胚数、獲得胚盤胞数、胚移植可能な胚数が多いことがわかりました。

これらの結果から、卵胞液中のメラトニン濃度は体外受精の成績や卵巣予備能を予測する指標になる得ることがわかりました。

コメント

メラトニンは体内で合成されるホルモンで、明るくなると分泌量が減少し、暗くなると増え、睡眠に最適な状態に身体を整え、睡眠の質を高めてくれます。

このメラトニンは、長い間、脳内の松果体から分泌されると考えられていましたが、最近の研究で、他の臓器でも分泌されており、女性の顆粒膜細胞や卵丘、卵母細胞などの末梢生殖器でも分泌されていることがわかってきました。

そのため、これらの生殖関連細胞からメラトニンを卵胞液に供給するため、卵胞内のメラトニン濃度は血中のメラトニンよりも高いことも確かめられています。

そして、卵胞液中で最も強力な抗酸化作用を発揮し、特に排卵時の酸化ストレスから卵母細胞を守る役割があります。

これまで、日本の研究でメラトニンのサプリメントを補充することで卵胞液中のメラトニン濃度が上昇し、酸化ストレスが低減し、受精率や妊娠率が向上することが確かめられていましたが、今回の中国の研究では、元々(補充なしで)の、卵胞液中のメラトニン濃度と卵巣機能や卵巣予備能の指標との関係が調べられました。

いずれも有意に関連するというもので、改めて、メラトニンが正常な生殖機能に深く関与していることがわかりました。

規則正しい生活リズムや起床後に朝日を浴びること、昼間の屋外での活動、夜は暗くすることが、妊娠を縁の下の力持ち的にサポートすることを教えてくれています。