油性と水性の造影剤による子宮卵管造影検査後の妊娠率比較

妊孕性に影響する因子

2017年05月21日

The New England Journal of Medicine

油性の造影剤を使った子宮卵管造影検査後を受けた女性の検査後の妊娠率や出産率は、水性の造影剤を使った子宮卵管造影剤検査を受けた女性に比べて高いことがオランダで実施された多施設無作為化比較対照試験で明らかになりました。

アムステルダム自由大学医療センターの研究グループは、子宮卵管造影検査の際に、油性の造影剤を使った場合と水性の造影剤を使った場合と検査後半年間の治療成績を比較し、油性の造影剤の有用性を検証すべく、オランダの27の不妊治療クリニックで無作為化比較対照試験を実施しました。

1,119名の子宮卵管造影検査を受ける女性を、油性の造影剤を使った検査(557名)と水性の造影剤を使った検査(562名)に無作為にわけました。

検査実施後6ヶ月間で、油性造影剤グループでは220名(39.7%)、水性造影剤グループでは161名(29.1%)が妊娠に至り、また、油性造影剤グループでは214名(38.8%)、水性造影剤グループでは155名(28.1%)が出産に至り、油性造影剤のほうが水性造影剤に比べて、妊娠率、出産率ともに有意に高いことがわかりました。

妊娠に至るまでの中央値は油性グループで2.7ヶ月、水性グループで3.1ヶ月と有意差はありませんでしたが、油性グループのほうが早期に妊娠に至った傾向がみられました。

また、妊娠の方法は油性グループ(220名)では、162名(73.6%)が自然妊娠、15名(6.8%)が卵巣刺激をしない人工授精、39名(17.7%)がマイルドな卵巣刺激を伴う人工授精、そして、4名(1.8%)がART治療(体外受精や顕微授精)によるものでした。

一方、水性グループ(161名)では、117名(72.2%)が自然妊娠、16名(9.9%)が卵巣刺激なしの人工授精、26名(16.1%)がマイルドな卵巣刺激を伴う人工授精、そして、2名(1.1%)がART治療でした。

有害な事象の発生率は低く、両グループに差はありませんでした。

このことから、子宮卵管造影検査後の一般不妊治療(タイミング法や人工授精)の治療成績は油性の造影剤を使ったほうが水性の造影剤に比べて有意に高く、油性造影剤のほうが有用であることが確かめられました。

コメント

子宮卵管造影検査は、卵管の通過性や子宮の大きさや形を調べる検査のことです。腟からカテーテルで子宮内に造影剤を注入すると卵管へと流れるので、これをX線撮影し、卵管閉塞や卵管周囲の癒着、卵管水腫、子宮奇形の有無を調べます。

また、検査により卵管の通りがよくなり、人によっては妊娠しやすくなること、その場合、油性の造影剤と水性の造影剤があるのですが、油性の造影剤を使ったほうが妊娠率や出産率が高いことも知られています。

ところが、その根拠となる研究報告は、5つのRCT(無作為化比較対照試験)とそのメタ解析がありますが、出産率では有意差が認められなかったり、被験者数も553名が最大の研究であったり、決して、質の高い方法によるものとは言えなかったため、今回の多施設無作為化比較対照試験が実施されました。

その結果、油性の造影剤の有用性をより質の高い研究によって裏付けられたことになりました。

油性の造影剤を使った子宮卵管造影検査を受けることで、体外受精へのステップアップが不要になる可能性があることから、油性の造影剤を使った子宮卵管造影検査は必須と言えます。

子宮卵管造影検査、そのものは約100年前から始まった「古典的」検査ですが、体外受精が普及し、当たり前な治療法になった現代だからこそ、その重要性がより高くなっているように思います。