ソウル大学の研究チームは、健康保健のデータベースを用いて、29-59歳の男性、20万6,492名の昼間と夜間に受ける騒音レベルと男性不妊の関係を調査しました。
2002年から2005年までの4年間の昼間と夜間の騒音レベルは、韓国The National Noise Information Systemと郵便番号から照合、算出しました。
2006年から2013年で3,293名が男性不妊と診断され、昼間と夜間の騒音レベルと男性不妊発症リスクとの関係を解析したところ、1dB単位の騒音の増大と男性不妊リスクは関連しませんでした。
ところが、WHO(世界保健機構)の騒音ガイドラインで定める夜間に受けると高頻度で健康被害が生じるとされるレベル(55dB)でわけ、年齢や生活習慣などの影響を受けないように調整した結果、夜間の騒音レベルが55dBを超えていた男性はそれ以下だった男性に比べて有意に男性不妊と診断されるリスクが高いことがわかりました。
この結果から、生活で受ける騒音、特に、夜間の騒音レベルは男性不妊のリスクファクターになり得ることが示唆されました。
コメント
騒音は不快感や集中力の低下、睡眠障害を招き、心臓病や精神疾患のリスクを高めることが知られています。音環境が生殖機能の低下を招くことは動物試験で検証されていますが、ヒト、特に男性不妊との関連について調べた研究はこれが初めてとのこと。
結果は、長期に寝室の騒音が55dB以上になれば男性不妊を招くリスクが高まるというものですが、驚いたのは55dBというのは、目安として、静かな事務所で50dB、静かな乗用車や普通の会話で60dBと言われていますので、決して、それほどのレベルではないということです。
因みに環境省の騒音に係る環境基準では、住居地域の夜間の基準が45dB以下で、住居地域でも2車線以上の車線を有する道路に面する地域では55dB以下になっています。
つまり、都市部の寝室ではよくあるレベルだということで、特に、暑い季節になり、窓を開けっ放しで寝る場合には55dB以上に曝される可能性が高くなります。
もちろん、長期に渡る音環境ですので、それほど神経質になることもないかもしれませんが、寝室はできるだけ静かであるに越したことはないようです。