アメリカのドレクセル大学の研究者らは、妊娠中のマルチビタミンのサプリメント摂取が出生児の知的障害を伴う、或いは伴わない自閉症スペクトラム(ASD)のリスクに関係するのかどうかを確かめることを目的にスウェーデンのストックホルム県の住民を対象に前向きコホート研究を実施しました。
1996年から2007年の間に生まれた子どもとその母親、273,107組を2011年12月まで追跡しました。初めての妊婦検診時にサプリメント摂取状況について調査し、追跡期間中の子どものASDの発症を診断記録から把握し、それらの関連を解析しました。
その結果、マルチビタミン摂取は62,840名(23%)、鉄のみの摂取は90,138名(33%)、鉄と葉酸の摂取は2,789名(1%)、そして、サプリメントを摂取していなかったのが91,895名(33.7%)で、母親が妊娠中にマルチビタミンを摂取していた子どもはサプリメントと摂取していなかった子どもに比べて知的障害を伴うASD発症リスクが有意に低い「調整後オッズ比:0.69(95%CI 0.57-0.84)」ことがわかりました。
ただし、知的障害を伴わないASDの発症とは有意差が認められませんでした。また、妊娠中の鉄と葉酸のサプリメント摂取と子どものASD発症リスクとは関連しませんでした。
このことから妊娠中のマルチビタミンのサプリメントの摂取は子どもの知的障害を伴うASDの発症リスクを低くすることが示唆されました。
コメント
妊娠中の母親の栄養状態は子どもの神経発達に影響することがこれまでの研究で明らかになっていますが、今回の研究では妊娠中のマルチビタミンのサプリメントの摂取が子どもの知的障害を伴うASDのリスクを低くすることが示唆されました。
厚労省は神経管閉鎖障害などの先天異常のリスク低減のために妊娠前から妊娠3ヶ月まで葉酸のサプリメントを摂取することを推奨していますが、今回の研究では葉酸だけ、或いは葉酸と鉄だけでは、ASDのリスク低減と関連しませんでした。
エビデンスレベルという観点からは、さらなる研究が必要ではありますが、妊娠前から妊娠を通して、マルチビタミンミネラルのサプリメントをとるのがよいかもしれません。