ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、果物や野菜を食べる量が子宮内膜症の発症リスクと関連するかどうかを調べるべく、約11万人の女性看護師を長期間に渡り追跡調査した大規模前向きコホート研究「看護師健康調査Ⅱ」のデータを用いた研究を実施しました。
開始時に子宮内膜症や不妊症でなかった対象者は70,835名で、1991年から4年ごとに食物摂取頻度調査票を用いて食事調査を実施、2013年迄追跡しました。
840,012観察人年(追跡した人数と追跡期間をかけたもの)中、腹腔鏡による子宮内膜症との確定診断がなされたのは2,609症例で、発生率は100,000観察人年あたり311名でした。
果物と野菜の摂取量と子宮内膜症の発症リスクの関連を解析した結果、果物の摂取が多いほど子宮内膜症の発症リスクは有意に低く、その関連性は、特に、柑橘類(オレンジやグレープフルーツ)ではっきりとあらわれ、1日に柑橘系の果物を1個以上食べる女性は、週に1個も食べない女性に比べて、子宮内膜症のリスクが22%低かったことがわかりました。
また、トータルの野菜の摂取量と子宮内膜症リスクとの間に関連性は見られませんでしたが、アブラナ科の野菜を1日に1サービング(70g)以上食べる女性は、週に1サービングも食べない女性に比べて子宮内膜症リスクが13%高かったことがわかりました。
栄養素でみると、βクリプトサンチンだけが摂取量と子宮内膜症の低リスクと有意に関連しました。
コメント
子宮内膜症とは子宮内膜以外のところに、子宮内膜ができてしまう病気で、不妊症の原因になることがあります。原因はよくわかっていませんが、炎症や癒着が引き起こされることから、これまで食生活との関連について研究が実施されています。
子宮内膜症のある女性は野菜や果物の摂取量が有意に少ないとのイタリアからの報告がある一方で、野菜の摂取量とは関連しないが、子宮内膜症のある女性は果物の摂取量が少ないという報告もあり、相反するものでした。
今回の研究では、大規模前向きコホート研究「看護師健康調査Ⅱ」のデータを解析し、果物、特に柑橘類を多く食べることと子宮内膜症の低い発症リスクとの関連性を見出しました。
柑橘類に豊富なβクリプトサンチンはビタミンAに変換されるプロブタミンAは豊富に含まれ、その働きによるものかもしれないとのこと。
アブラナ科の摂取量と子宮内膜症の発症リスクが関連したという結果には驚きましたが、研究チームにとっても予想外だったようです。
なにかと突出して食べるようなことはせず、満遍なく食べることが大切だということでしょう。