この研究は英国食品基準庁から委託され、インペリアル・カレッジ・ロンドン医学部教授が中心となり、妊娠中や授乳中の女性の食と児のアレルギー発症リスクについての400の論文(対象者総数が150万人)のデータを統合し、解析されたものです。
主な結果は以下の通りです。
19件の介入研究から、妊娠後期と授乳中に母親がプロバイオティクスのサプリメントを摂取すると出生児の湿疹の発症リスクが22%低下するかもしれない(RR 0.78; 95%CI 0.68-0.90; I2=61%)。この効果は1000人あたり44症例の発症減に相当する。
6件の研究から、妊娠20週から授乳3、もしくは、4ヶ月まで母親が魚油のサプリメントを摂取すると出生児の1歳までの卵アレルギーの発症リスクが31%低下するかもしれない(RR 0.69; 95%CI 0.53-0.90; I2=14%)。この効果は1000人あたり31症例の発症減人に相当する。
これらのエビデンスレベルは中程度。
授乳期間が長くなるほど児の湿疹(1件の介入研究)や1型糖尿病発症(28件の観察研究)リスクが低くなる。
授乳中のプロバイオティクスのサプリメント摂取は児の牛乳アレルギー発症リスクが低くなるかもしれない(9件の介入研究)。
これらのエビデンスレベルは低い。
その他、プレバイオティクスやアレルギー食物の回避、ビタミンやミネラル、果物、野菜の摂取は児のアレルギーや自己免疫疾患の発症リスクと関連しなかった。
これらの結果から、妊娠後期や授乳中のオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)や乳酸菌等のプロバイオティクスのサプリメントは児のアレルギー発症リスクを低下させるかもしれません。
コメント
妊娠中や授乳中の食と児のアレルギー発症リスクの関連についてのシステマティックレビューとメタ解析ではこれまでで最も規模の大きいものとのこと。
DHAやEPAなどの魚油はオメガ3脂肪酸の属する脂肪酸で、体内で抗炎症作用のある物質に変換されます。また、乳酸菌等のプロバイオティクスのサプリメントは、免疫機能に関与する微生物叢を整える可能性があります。
子どものアレルギー発症のメカニズムは、まだまだ、未知の領域が大部分で、母親になる女性の食事との関連も完全に明らかになっているわけではありません。
そのため、オメガ3脂肪酸や乳酸菌やビフィズス菌のサプリメントを摂取することもさることながら、妊娠前から油の多い魚を頻繁に食べること、腸内環境を整えるような食生活や生活習慣を心がけること、そして、さまざまな食材を偏りなく、食べることが大切です。