妊娠前の食事内容によって妊娠しにくくなるかどうかを調べることを目的に、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、英国の4ヶ国、6都市の妊婦を対象にした研究を実施しました。
被験者は5598名の妊婦で、初めての検診時(妊娠14-16週)に質問票で果物、緑色野菜、魚、ファストフードの食べる頻度を回答してもらい、それぞれの食べ物の食べる頻度と妊娠迄に要した期間、不妊症(妊娠迄に1年以上かかった)との関係を統計学的に解析しました。
尚、被験者のうち不妊治療を受けた女性は340名(6%)で、ほとんどの女性は不妊治療を受けていませんでした。
その結果、果物の食べる頻度が少ない女性ほど、また、ファーストフードを食べる頻度が多い女性ほど、妊娠迄の期間が長くなり、妊娠迄に1年以上かかることが多いことがわかりました。
果物の摂取頻度が最も少なかった女性は最も多かった女性に比べて妊娠迄に0.6ヶ月長くかかり、不妊症が4%多くいました。一方、ファーストフードの摂取頻度が最も多かった女性は最も少なかった女性に比べて妊娠迄に0.9ヶ月長くかかり、不妊症は8%多くいました。
1日に果物を3回以上食べる女性と比べて、1日に1、2回食べる女性は妊娠迄の期間が6%、週に1-6回食べる女性は11%、月に2、3回食べる女性は19%、ぞれぞれ、妊娠する迄に長くかかりました。
反対に、ファーストフードを週に4回以上食べた女性に比べ、週に2、3回食べた女性は妊娠迄の期間が11%、週に1回の女性は21%、そして、食べなかった女性は24%、それぞれ、短かったことがわかりました。
不妊症の割合では、1日に3回以上果物を食べた女性に比べ、1日に2、3回食べた女性は7%、週に1-6回の女性は18%、月に1-3回の女性は29%、それぞれ高く、反対に、週に4回以上ファーストフードを食べた女性に比べ、週に2、3回の女性は18%。週に1回の女性は34%、食べなかった女性は41%、それぞれ、低かったことがわかりました。
緑色野菜や魚の食べる頻度は妊娠迄の期間や不妊症と関連しませんでした。
これらの結果から、妊娠前の果物の食べる量が少なかったり、ファーストフードの食べる頻度が多かったりするとわずかな差であるものの、妊娠しにくくなる可能性のあることがわかりました。
コメント
これまで食事と妊娠しやすさの関係について、多くの研究報告がなされていますが、いずれも不妊治療を受けている女性を対象としたもの、また、男性の精液所見との関係を調べたもので、健康な女性を対象とした研究は初めてのようです。
また、女性のファーストフードの食べる頻度の影響を調べたのも、私たちが調べた限りでは初めてです。
統計学的に有意な関連が見出されたのは果物とファーストフードで、果物を食べる頻度が少ないほど、反対にファーストフードを食べる頻度が多いほど、妊娠迄に長い期間がかかり、不妊症、すなわち、妊娠迄の期間が1年以上にかかるリスクが高くなるという結果でした。
食生活と言っても、果物と緑色野菜、魚、ファーストフードの食べる頻度という大雑把なもので、かつ、男性の影響は全く無視していますが、健康な女性の自然妊娠での食べ物と妊娠しやすさの関連を示した研究として大変興味深い研究です。