研究は、過去に1回か2回の流産の経験があるけれども不妊症ではない18〜40歳の女性を対象に低用量のアスピリンの有効性を調べるために実施した二重盲検無作為化比較試験、EAGeR研究のデータを用いて実施されたものです。
1191名の女性の試験開始時、また、妊娠した女性には妊娠8週間に測定したビタミンDの指標とされている血中の25(OH)Dについて、充足している(75nmol/L以上)グループと充足していない(75nmol/L未満)グループに分けたところ、ビタミンDが足りている女性は555人(47%)、不足している女性は636人(53%)と、ほぼ半々の割合でした。
そして、妊娠にチャレンジした6周期、そして、妊娠した女性については出産するまで追跡して、妊娠率や出産率、流産率を比較しました。
その結果、ビタミンDが足りている女性は足りていない女性に比べて妊娠率で10%、出産率で15%、それぞれ、高かったことがわかりました。
また、妊娠に至った女性においては、妊娠前(研究開始時)にビタミンDが足りていた女性は足りていなかった女性に比べて流産率が12%低かったのに対して、妊娠8週目のビタミンD濃度は流産率と関連しなかったことがわかりました。
このことから、妊娠前からのビタミンDの充足は良好な妊娠率や出産率、低い流産率に関連することがわかりました。ただし、妊娠初期のビタミンD濃度は流産率に関連しませんでした。
コメント
この結果だけで、ビタミンDのサプリメントを飲むことで妊娠率や出産率が高くなり、流産率が低下するという結論を導くのは早計ですが、妊娠を目指す女性はビタミンDを不足しないように気をつけるに越したことはないということは言えます。
特に今回の研究は、規模が大きい前向き試験であり、これまでの同様の(不妊症でない女性を対象にした)研究報告に比べると信頼性は高いと言えます。
今回の研究で、興味深かったことは、全体の91%の女性はマルチビタミンのサプリメントを飲んでいたというのですが、ビタミンDの過不足の割合はマルチビタミンを飲んでいても飲んでいなくても変わらなかったということです。
つまり、マルチビタミンではビタミンDの不足予防に役立っていなかったというわけで、マルチビタミンに配合されているビタミンDの量では足りないということなのかもしれません。
実際のところ、これまでの研究ではビタミンDは最低でも1日に20〜25μg(800〜1000IU)は必要とされていますが、市販のマルチビタミンをみてみると、せいぜい、5〜10μgです。
さらに、ビタミンD値のレベル、たとえば、不足レベルではなく、20ng/mL未満の欠乏レベルでは、たとえ、25μg(1000IU)を補充しても、なかなか、充足レベルに達しないこともわかっています。
そのため、出来ればビタミンDの指標である血中の25(OH)Dを測定し、現在のレベルに応じて、ビタミンDのサプリメントの摂取量を決め、摂取後、充足レベルに達しているかどうか、定期的に血液検査を受けることが無難です。