2014年9月から2016年12月までミラノの不妊治療クリニックで体外受精や顕微授精を受けるために検査を受けた男性323名(平均年齢39.2歳)を対象に、アルコール摂取量と精液検査結果の関係を調査しました。
過去1年間の週あたりの食品や飲料の摂取頻度と1回あたりの摂取量について食物摂取頻度調査票で回答してもらい、週あたりの摂取アルコール単位を算出しました。
イタリアの基準ではアルコールの1単位は、エチルアルコール12.5gで、ワインでは125mL、ビールで330mL、蒸留酒で30mLです。
週あたりの飲酒量で4つのグループに分けたところ以下のようになりました。数値は、人数(割合)、中央値(四分位範囲)です。
・全くお酒を飲まない:31名(9.6%)、0(0)
・週に1から3単位飲む男性:97名(30%)、2.63(0.85-5.44)
・週に4から7単位飲む男性:98名(30.3%)、9.58(5.70-14.20)
・週に8単位以上飲む男性:97名(30%)、21.21(14.27-108.13)
飲酒量と精液検査結果で統計学的に有意な差がみられたのは、精液量、精子濃度、総精子量でした。
精液量は、週に4から7単位飲む男性がもっとも多く(中央値3mL)、次に週に8単位飲む男性(同2.6mL)、週に1から3単位飲む男性(同2.4mL)、そして、全くお酒を飲まない男性がもっとも少ない(同1.8mL)という結果でした。
一方、精子濃度は全くお酒を飲まない男性がもっとも多く(同4200万/mL)、次に週に8単位以上飲む男性(同3900万/mL)、週に4から7単位飲む男性(同3100万/mL)、そして、週に1から3単位飲む男性がもっとも低い(同2450万/mL)という結果で、飲酒量と精子濃度はU字型の傾向を示しました。
ところが、総精子量は週に4から7単位飲む男性がもっとも多く(同8790万)、次に全く飲まない男性(同8540万)、週に8単位以上飲む男性(同8400万)、そして、週に1から3単位飲む男性がもっとも少ない(5150万)という結果でした。
このようにアルコール摂取量と精液量や精子数は有意に関連しましたが、決して、飲酒量が少ないほど結果がよいというわけではなく、むしろ、適度な飲酒量は精液検査結果によい影響を及ぼすことが示唆されました。
コメント
男性のアルコール摂取量と精液検査結果の関係については多くの研究報告がなされています。
ところが、その結果は、相反するもので、男性のアルコールは精液検査結果にマイナスの影響を及ぼすというものもあれば、及ぼさないというものもあります。
この論文の筆者は、相反する結果が出ているのは研究によって、飲酒量のカテゴリー分けにばらつきがあること、研究の被験者によって、飲酒習慣が異なるからではないかとしています。
最も新しいメタアナリシスでは15件の横断研究を統合、解析した結果、毎日の飲酒は精液検査結果にネガティブな相関を示すが、たまに飲酒することは関連しないと報告しています。
今回の結果をみると、全く飲まない男性が、必ずしも、精液検査結果が最も良好だったわけではなく、お酒を飲む男性のほうが良好でした。
被験者の飲酒量をよくみてみると、全体に適度な飲酒量の男性が多かったようで、週の飲酒量の中央値は8.3単位と1日に1単位と少しです。これは、1日にワインでグラス1杯、、ビールで缶ビール1本程度で、個人差もあるかもしれませんが、ほどほどの量です。
これらの結果から、不妊治療に臨むカップルの男性にとっては、禁酒するほどのことはなく、適度な量であれば問題ない、いや、むしろ、プラスになるかもしれないということになります。
ただし、程度な量でも毎日飲むのは避けたほうが無難かもしれません。