オーストラリアのクイーンズランド大学の研究者らは、1981年から2010年の間でデンマークで生まれた子どもの出生時のビタミンDの指標である25(OH)Dレベルと統合失調症の罹患率の関係を調査しました。
1301名の統合失調症と診断された子どもをランダムに抽出、同数の対症群として性別や年齢が同じで統合失調症でない子どもを抽出し、25(OH)D値で5つのグループに分け、統合失調症の罹患率を比較しました。
その結果、ビタミンDレベルが最も低かったグループ(20.4nmol/L未満)は、ビタミンDレベルが2番目に高かったグループに比べて統合失調症の罹患率が44%高いことがわかりました(IRR=1.44, 95%CI1.12-1.85, p=0.004)。
新生児のビタミンDは母親由来であることから、妊娠中のビタミンD低値は出生時の統合失調症のリスク因子になるかもしれないとしています。
コメント
ビタミンDはキノコ類や魚類などの食品からも摂取しますが、体内で使われるビタミンDのほとんどは紫外線を浴びて、コレステロールから皮膚でつくられています。そのため、体内のビタミンDレベルには季節変動があり、冬から春にかけて低くなることが知られています。
その一方で、冬から春にかけて生まれた子どもに統合失調症が多いこと、また、脳のドーパミンが作動する領域にビタミンD受容体が多く存在することから、ビタミンD不足が脳の発達にマイナスの影響を及ぼし、統合失調症の発症に関与しているのではないかと考えられてきました。
今回も研究はその仮説を検証すべく、デンマークの国家統計を利用して、新生児のビタミンDレベルと統合失調症の発症リスクの関連を調査しました。
妊娠前、妊娠中を通して、ビタミンDの充足を意識することが大切かもしれません。