男性不妊患者への抗酸化サプリメント -コクランレビュー

生活習慣・食事・サプリメント

2019年04月17日

Cochrane Database of Systematic Reviews

不妊治療クリニックに通院するカップルの男性不妊患者の抗酸化サプリメント摂取によってパートナーの出産率や妊娠率が向上するかもしれないという、これまでの研究で得られたデータを統合し、解析した結果がコクランレビューより発表されました。ただし、対象とした研究はいずれも規模が小さく、エビデンスレベルは低いとしています。

不妊治療を受けているカップルの男性パートナーへの抗酸化サプリメントの有効性と安全性を調べるべく、61件のRCT(無作為比較対照試験)で得られたデータを統合し、解析しています。

総被験者数は6,264名、年齢は18-65歳で、カップルのいずれかが不妊治療クリニックに通院し、ART治療を含む治療を受けていました。

男性の抗酸化サプリメントの摂取はプラセボ、または、無治療に比べて、パートナーの妊娠率を向上させるかもしれません(OR 2.97, 95% CI 1.91 to 4.63, P < 0.0001, RCT 11件, 男性参加者786名, I2 = 0%, エビデンスの質は「低い」)。

プラセボ、または、無治療での妊娠率が7%であったとすると、抗酸化サプリメントを使った場合には12-26%と推定されますが、この結果は、11件の小規模試験における786組のカップルによる105の臨床妊娠によるものであるとしています。

また、男性の抗酸化サプリメントの摂取はパートナーの出産率を向上させるかもしれません(OR 1.79, 95% CI 1.20 to 2.67, P=0.005, RCT7件,男性参加者 750名, I2 = 40%, エビデンスの質は「低い」)。

プラセボ、または、無治療での出産率が12%であったとすると、抗酸化サプリメントを使った場合には14-26%と推定されますが、この結果は、わずか7件の比較的小規模試験における750組のカップルによる124件の出産によるものであるとしています。

流産や消化器不調等の有害事象の増加は認められませんでした。

小規模なRCTによる低いエビデンスレベルではありますが、不妊治療クリニックに通院するカップルの男性不妊患者の抗酸化サプリメント摂取は出産率や妊娠率を増加させるかもしれません。

コメント

男性因子は不妊症カップルの原因のおおよそ半数に存在すると見積もられ、その多くに酸化ストレスが関与していると考えられています。

そのため、抗酸化サプリメントは酸化ストレスを低減することで精子の質の改善が期待されています。これまで、2011年にもコクランレビューが発表されていますが、最近、コクランレビューの最新版が発表されました。

ART女性患者の男性パートナーが抗酸化サプリメントを摂取することで治療成績の改善になるかもしれないということですが、低いエビデンスレベルとされています。

それは、妊娠率や出産率まで調べた無作為比較対照試験の数が少なく、規模も小さいこと、さらには、抗酸化サプリメントと一口に言っても多くの種類の抗酸化物質がありますし、単剤もあれば、複数の種類の抗酸化物質をブレンドした合剤もあり、どんな抗酸化物質をどれくらいの量を、どれくらいの期間摂取すればいいのか、わかっていないからです。

いずれにしても、不妊原因の半分は男性が関わっていることを考えると、抗酸化サプリメントも摂取や生活習慣の改善で、精子の質を少しでも改善することは必要であることは間違いありません。