中国全土の妊娠時の異常の発生率低減を目的とした、中国政府機関によるコホート研究、NFPCP(the National Free Pre-conception Check-up Projects)のデータを用いて女性の空腹時血糖値と妊娠しやすさとの関係が調べられました。
月経不順(PCOS)や不妊症の女性を除いた2,226,049組の妊娠希望の女性を1年間、もしくは、妊娠成立まで追跡しました。
空腹時血糖値で正常(6.1mmol/L未満※1)、空腹時血糖異常(6.1mmol/L以上、7.0mmol/L未満※2)、糖尿病(7.0mmol/L以上※3)の3つのグループにわけ、妊娠までに要した期間から算出した妊娠率を比較しました。
その結果、調査期間中に795,968名の女性(35.76%)が妊娠し、その内の83.05%は最初の6周期で妊娠に至っており、12周期の全体の累積妊娠率は41.79%でした。
空腹時血糖値が高かったグループの累積妊娠率は34.39%で、空腹時血糖異常の女性では35.52%、糖尿病の女性では31.52%で、いずれも空腹時血糖値が正常な女性の42.29%と比べて有意に低かったことがわかりました。
妊娠率に影響する因子を調整した後の空腹時血糖値女性と比べた妊娠率のオッズ比は、空腹時血糖異常女性で0.82(95% CI:0.81-0.83)、糖尿病女性で0.74(95% CI:0.72-0.76)で、それぞれのグループの妊娠率は正常グループに比べて、18%、26%低かったことがわかりました。
そして、最も妊娠しやすい(妊娠までの期間が短い)空腹時血糖値は3.90から4.89mmol/L※4でした。
これらの結果から女性の血糖値の上昇は、妊娠するまでの期間が長くなり、妊娠する力が低下することが示唆されました。
◎mg/dL換算
※1)109.8mg/dL未満
※2)109.8mg/dL以上126mg/dL未満
※3)126mg/dL以上
※4)70.2から88.02mg/dL
コメント
糖の代謝異常があり、空腹時の血糖値が高かったり、糖尿病の女性は妊娠しにくくなることは知られていましたが、空腹時血糖値と妊娠率の関係を大規模な研究で検証した研究データはありませんでしたが、今回の中国の研究は222万6048名の女性を対象にした前向き研究で、大変な被験者数で、中国ならではの規模です。
空腹時血糖異常は1.17%、糖尿病は2.94%の割合で、いずれも正常な女性に比べて妊娠率は有意に低く、高血糖は妊娠に不利であることがわかりました。
因みに日本の厚労省の国民健康栄養調査2016年度版では、空腹時血糖値異常にあたる糖尿病が強く疑われる者、糖尿病の可能性を否定できない者(ヘモグロビン A1cが 6.0%以上)は、30代女性で0.7%、40代女性で5.1%と、年齢が高くなるほど糖の代謝異常が増えることがわかります。
空腹時血糖値が高くなると妊娠しづらくなりますが、本人はそのことを自覚していないケースが多いようで、明らかな症状がないからです。
空腹時高血糖は、食事や運動で改善することが可能です。
40代以降は空腹時や食後の高血糖に気をつけるべきです。