ミラノの不妊治療クリニックでART治療を受ける女性に、採卵日に食物摂取頻度調査票を用いて、78種類の食品や飲料について過去1年間の週あたりの摂取頻度と摂取量を回答してもらい、地中海スコアを算出しました。
地中海スコアの算出方法は、野菜や豆類、果物、穀物、魚、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比、アルコールが被験者平均量よりも多ければ、各食品につき1ポイント付与、赤身肉・肉加工食品や牛乳・乳製品は被験者平均量よりも少なければ1ポイント付与され、合計ポイント(最小が0ポイント、最大が9ポイント)としました。
そして、地中海食スコアが低スコア群(0-3)、中スコア群(4-5)、高スコア群(6-9)の3グループにわけ、その後の最初の治療周期の成績との関連を解析しました。
474名の女性(平均年齢:36.6歳)の414回の胚移植が行われ、150(31/6%)の臨床妊娠、117(24.7%)の出産に至りましたが、地中海食スコアと調整前、調整後の妊娠率や出産率は関連しませんでした。
イタリア人のART女性患者を対象とした前向き研究では地中海食スコアと妊娠率や出産率の間に関連性は見出せませんでした。
コメント
地中海料理の特徴は以下の通りです。
・野菜、果物の摂取量が多い。
・全粒粉を使っている。
・脂質はオリーブオイルが中心。
・ナッツ類、ベリー類、豆類、イモ類の摂取量が多い。
・魚、鶏、乳製品を少量から中量、赤身肉の摂取は少ない。
・卵は週4回以下。
・少量から中量のワインを食事と一緒に飲む。
食習慣がどのくらい地中海食に近いかを数値化したものが「地中海食スコア」です。スコアが大きいほど地中海食に近いことを意味します。
これまで、地中海食とART治療成績の関連を調査した研究では、概ね、スコアの高さ、すなわち、地中海食に近い食べ方は良好な妊娠率や出産率に関連するというものでした。
ところが、今回の研究ではそれらに相反する結果で、関連しないというものでした。
筆者はその背景として、イタリア人は、もともと、他の地域に比べて、全体に地中海食に近い食べ方をしているので差が出なかったのではないかとコメントしています。
また、穀物を全粒穀物と精製穀物にわけていないことも影響しているのではないかとしています。
食は国や地域、文化、体格によって、大きく異なるため、同じ研究方法では結果が異なってくるのかもしれません。
それほど、食事の因子は複数あり、複合的に影響しているということでしょう。
ただし、栄養素や食品単体ではなく、食事パターンで考えることが大切であることは変わりありません。
ちなみに、同じ施設で、同じ期間にART女性の男性パートナーを対象に、地中海食と精子の質との関連を検討した研究が実施されていますが、こちらは地中海食は良好な精液所見と関連したというものでした。