北京大学深セン病院の研究者らは、2016年9月から2017年12月まで、590名のART女性患者を対象に治療開始時に食物摂取頻度調査票に回答してもらい、地中海食スコア(0-8)を算出し、スコアが3から6を高スコア群(228名)、0から2を低スコア群(362名)に割り付け、その後の治療成績との関連を解析しました。
その結果、高スコア群の移植可能胚数は低スコア群に比べて有意に多い(8.40±5.26 vs 7.40±4.71, p=0.028)ことがわかりました。
ただし、着床率や妊娠率には差はありませんでした。
地中海食に近い食べ方は、ART治療において、獲得胚数を増やす可能性があることが示唆されました。
コメント
これまで地中海食とART成績の関係については3つの研究報告がなされています。1つは、ギリシャの研究では、35歳未満で非肥満の女性では、地中海食に近い食べ方は体外受精の良好な妊娠率や出産率に関連したとの報告がなされ、もう1つのオランダの研究でも良好な治療成績に関連したの報告がある一方、イタリアの研究では関連しなかったとの報告がなされています。
今回の中国の研究では、地中海食に近い食べ方と有意な関連があったのは移植可能胚数増加のみでしたが、ギリシャやオランダの研究は、受精率や胚数には差がなかったものの良好な妊娠率に関連したというもので、子宮内膜の受容能の改善を介したものと考えられています。ただし、オランダの研究では地中海食に近い食べ方は血中や卵胞液中の葉酸やビタミンB6の濃度が有意に高く、そのことが良好な卵巣反応や卵質に関連したのかもしれないとしています。
このような結果のバラツキは被験者の人種や地中海食スコアの算出方法が異なることによるのではないかとしながらも、地中海食に近い食べ方はビタミンB群や抗酸化作用のあるポリフェノールを多く摂ることになり、それが良好なART成績に寄与しているのかもしれないとしています。