スペインのナバロ大学とハーバード大学の研究者らは、妊娠前のカップルの葉酸摂取量と妊娠期間や出生時体重の関連を検討すべく、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べている現在進行中の研究)に参加している108組のカップルの113の妊娠、出産症例を対象にした前向き研究を実施しました。
治療開始前にFFQ(食物摂取頻度調査票)を用いて食事やサプリメントからの葉酸の摂取量を調べ、妊娠期間や出生時体重との関連を解析しました。
多変量解析による交絡因子補正後、父親の妊娠前の葉酸摂取量と妊娠期間が関連し、1日の葉酸摂取路量の増加が2.6日の妊娠期間の延伸に有意に関連しました(95% CI 0.8-4.3,p=0.004)。
一方、母親の葉酸摂取量と妊娠期間、また、父親や母親の葉酸摂取量と出生時体重は関連しませんでした。
高度生殖補助医療を受けて妊娠、出産したカップルでは、妊娠前の父親の葉酸摂取量の増加は妊娠期間のわずかな延伸に関連したことから、妊娠前からの父親の栄養摂取が子の健康に影響を及ぼすことが示唆され、プレコンセプションケアは女性だけでなく、カップルで取り組むべきだと言えます。
コメント
母親になる女性の妊娠前の葉酸の不足は悪玉アミノ酸と言われているホモシステインを増加させたり、遺伝子発現に関与するDNAのメチル基の供給量を減らすことから、妊娠や出産、子の健康にマイナスの影響を及ぼすことが知られています。
その一方で、父親になる男性の葉酸摂取量の影響については、これまで動物試験では胎盤形成や胎児の健康に影響を及ぼすとの報告がなされてはいますが、女性に比べてよくわかっていませんでした。
今年に入って、オランダのエラスムス医科大学の研究チームによって自然妊娠では妊娠前の父親の赤血球中の葉酸濃度が高過ぎても、低過ぎても、胚の成長曲線低下に関連したとの報告がなされました。
今回は、体外受精や顕微授精を受けているカップルを対象にしたもので、プレコンセプションケアは女性だけでなく、カップルで取り組むべきであること教えてくれています。