華中科技大学同済医学院の研究者らは、男性の身体活動、あるいは座位時間が精液所見に関連するか否かを検討すべく研究を実施しました。
湖北省精子バンクに精子提供者として登録している男性746名に、身体活動を調査するために作られた国際標準化身体活動質問票(IPAQ)Long版に回答してもらい、身体活動(仕事中、移動中、家庭や余暇)を3つの強度(歩行、中等度の身体活動、強い身体活動)にわけて評価し、半年間にトータルで5252(1被験者あたり平均7サンプル)の精液サンプルを提供してもらいました。
被験者をIPAQの結果から算出したトータルメッツスコア(1週間あたりの運動強度の指数であるメッツに運動時間(分)をかけた数値)や中等度から強い身体活動のメッツスコア、そして、座位時間で4つのグループにわけ、精液所見(精子濃度、総精子数、前進精子運動率、精子運動率)との関連を解析しました。
身体活動や座位時間以外の因子の影響を除外した結果、トータルメッツスコアや中等度から強い身体活動のメッツスコアが最も高かったグループの男性は最も低かったグループに比べて、前進精子運動率は、それぞれ、16.1%(95%CI :6.4, 26.8%)、17.3%(95%CI:7.5, 27.9%)、精子運動率は、それぞれ、15.2%(95%CI:6,2, 24.9%)、16.4%(95%CI:7.4, 26.1%)、高いことがわかりました。
一方、座位時間との関連は見出せませんでした。
また、被験者のBMIや年齢でみてみると、トータルメッツスコアや中等度から強い身体活動のメッツスコアと前進精子運動率や精子運動率との有意な関連は、BMIが24未満、年齢が28未満の被験者のみにおいて認められました。
このことから、習慣的な運動は健康で、不妊症でない男性の精子の質を改善させるかもしれないこと、そして、この傾向は肥満でない男性、若い男性でより強いことがわかりました。
コメント
運動と精子の質の関係については、これまでも多くの研究報告がなされていますが、被験者が精子バンクに精子提供者として登録しているという、男性不妊症でない健康な男性で、746名という規模で、精液サンプルが同一被験者から平均7サンプル提供されていることが、今回の特徴です。
結果はトータルのメッツスコアや中等度から強い身体活動のメッツスコアが高いほど精子運動率が良好であることがわかりました。
運動習慣は、体内に備わる抗酸化作用を高めたり、ホルモンバランスによい影響を及ぼすことから精子の質にプラスに働くのではないかとのことです。