ベルギーのルーヴェン大学の研究チームは、男性の年齢が体外受精の成績に及ぼす影響を調べることを目的に、2015年4月から2017年9月の間に体外受精を開始した87組みの患者カップルの1057の受精卵を対象に父親になる男性の年齢と胚発育の関係を前向きに調査しました。
男性の被験者のほとんどは精液検査に問題はなく、男性不妊患者ではありませんでした。
その結果、2日目の4分割期胚や3日目の8分割期胚まで成育する割合が男性の年齢が高くなるほど低いことがわかりました。
男性が25歳では2日目の4分割期胚が53%、3日目の8分割期胚は38%得られたのに対して、45歳になると、それぞれ、35%、20%に低下で、男性の年齢が1歳年をとるごとに3日目に正常な8分割期胚が得られないオッズ比は0.96(95% CI:0.93-0.991; P=0.011)で、有意な差でした。
このことから、男性の年齢も治療成績に影響を及ぼすことが示唆されました。
コメント
男性の年齢が治療成績にすると言っても、もちろん、その程度は女性の年齢ほどではありません。
因みに女性が20-24歳の流産率が9%に対して、45歳になると75%にも上昇します。
それは、もう比べるべくもないのですが、たとえ、女性ほどではなかったとしてもですね、男性の年齢も影響しているかもしれないということは、とても大きな意味合いをもつはずです。
少し前に発表されたカナダのトロント大学の研究でも、卵子提供で体外受精を受けたカップル407組の3118個の胚盤胞をPGT-Aで染色体の数的異常を診断した結果、男性の年齢が39歳以下に比べて50歳以上では部分的数的異常の割合が有意に高かった(19.4% vs. 36.6%)との報告がなされています。
つまり、男性も高齢化すると精液検査、すなわち、精子の数や運動性に問題なくても、精子の質が低下し、その結果、胚の染色体異常のリスクが高くなり、胚発育の障害になるのかもしれません。
男性の精子の質は生活習慣の改善や抗酸化サプリメント摂取で改善できる可能性があります。