禁欲期間が短い方が精子の質が良好であることは、今までの研究でも明らかになっています。
そこで、中学の研究者らは、顕微授精をうける乏精子症の男性を対象に、禁欲期間と精子の質や胚発育、治療成績への影響を調査しました。
研究方法は以下の通りです。
男性被験者は、2〜10日間の禁欲期間を実施し、採卵と同じ日に1回目の射精の後、3時間以内に2回目の射精を行いました。
そして、1回目と2回目の射精で、精子パラメーターや精子断片化指数、また顕微授精を行った後の胚の発育や胚盤胞到達、治療成績を比較しました。
その結果、1回目の射精に比べ、2回目の射精で得られた精子の方が、運動率や正常形態率、精子DNA断片化指数*は明らかに改善されていたということです。
さらに、顕微授精を行った後の良好な胚盤胞の割合についても2回目の射精による精子の方が明らかに高いという結果でした。
また、明確な差ではないものの、その後の着床率、妊娠率、出産率についても、2回目の射精の方が高い傾向がみられたということです。
*) 精子DNA断片化指数(DFI):精液の中にDNAの損傷した精子が含まれる割合で、精子の質をはかる指数として用いられる。
コメント
卵子は女性の年齢とともに老化していく一方で、精子は毎日つくられ続けるため、食事や生活習慣の改善により、質をよくしていくことができます。
その中でも、禁欲期間が長くなると、質の低下した精子が増えてしまうため、短期間での連続射精はコストもかからず取り組みやすく、有効な方法です。
加えて、精子の質の改善のために男性が取り組める方法として、以下のようなものがあります。
・バランスの良い食生活を心がける
肉食に偏りがちな方は、野菜や果物、魚も意識して摂るようにし、炭水化物は玄米ごやんやライ麦パンなどの、精製度の低いものに替えてみましょう。
・十分な睡眠と適度な運動を
適度な運動は体の抗酸化力を高め、ホルモンバランスにもよい影響を及ぼしますが、過度な運動はかえって精子の質の低下につながるので注意が必要です。
・適正体重を維持しましょう
やせすぎ、太りすぎ、どちらもパートナーの妊娠率の低下につながることがわかっています。
・タバコやアルコールはほどほどに
精子の質を下げる原因となる、酸化ストレスを増やしてしまうほか、アルコールは男性にとって大切なミネラルである亜鉛の吸収を妨げてしまいます。
・育毛剤はひかえましょう
フィナステリドを主成分とするAGA治療薬には、男性ホルモンの作用を抑えるはたらきがあるため、精子の質の低下につながります。
・高温に注意
精子をつくる精巣は熱に弱い性質があります。長時間のサウナや入浴、ぴっちりとした下着は避けるようにしましょう。